目黒 大圓寺を訪ねて

目黒駅西口を出て目黒川に向かう途中には15 度にもなる急勾配の坂、行人坂があります。
その途中にあるのが、今回行ってきた「大圓寺」です。

山号は松林山、本尊は釈迦如来、そんな大圓寺が創建されたのは寛永元年(1624)、目黒は江戸城の南西、つまり「裏鬼門」に位置するため、江戸城守護のため徳川家からの命で、湯殿山の行者、大海法印が道場を開いたことからこの寺の歴史が始まりました。

天台宗は、法華思想を中心として、戒律、密教、禅、浄土教などの教えを結集させた独自の総合仏教です。開祖は最澄(伝教師)、本尊は釈迦牟尼仏、阿弥陀如来、大日如来、薬師如来、不動明王等、総本山は比叡山延暦寺です。
↓天台宗については下記記事にて詳しく解説しています↓



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山の手の大黒天様

山門をくぐると真正面に構えるのが大圓寺の顔とも言える本堂です。
大圓寺は別称大黒寺と呼ばれるほど大黒天との縁が深いのです。

このお堂には徳川家繁栄と江戸城守護のために、、徳川家康をモデルにして作られたという「開運大黒天」がお祀りされており、元祖山手七福神の中の大黒天様のことでもあります。
本堂の開運大黒天の後ろには「木造十一面観音(目黒区重要文化財)」も鎮座されています。

そしてここに鎮座しているのは開運大黒天だけではなく、珍しい「三面大黒天」も秘仏として祀られているのです。
(※大圓寺の三面大黒天像は秘仏なので拝観することはできません)

「三面大黒天」とは、大黒天・弁財天・毘沙門天の三柱が合体した、開運招福をもたらす神様の像です。スピリチュアル的にもかなりパワーが強く、あの豊臣秀吉も三面大黒天を拝み、天下人にまで出世したと伝えられています。
(※大圓寺の三面大黒天ではありません)



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行人坂火事と大圓寺石仏群

大圓寺でもう一つ来訪者の目を引くのは、山門から入って左側にある夥しい石仏群です。
なぜこれほどまでの石仏が安置されているのかということについては、ここの寺院だけでなく、江戸の町に深く関わる波乱の歴史があるのです。

明和9 年(1772 年日)、ここ大圓寺から火災が発生しました。

13 時頃発生した炎は風に煽られあっという間に燃え広がり、武家屋敷も町民長屋もことごとく燃やし続けました。
激しい炎の勢いに延焼を止めることができず、神田、日本橋、果ては浅草にまで被害は広がり、死者・行方不明者は合わせて2 万人近くにもなりました。

これが明暦の大火、丙寅の大火と並び「江戸の三代火事」とされる明和の大火、またの名を「行人坂の大火」です。

火災の原因が大黒寺の僧侶による放火だったため(盗みの発覚を恐れて放火したという)、大圓寺は76 年間のあいだ、再建を許されませんでした。

500 体を超える石仏群は、この行人坂の大火の犠牲者の供養のため、50 年の年月をかけて建立されたと言われています。
石仏群の前に安置されているのは普賢菩薩・文殊菩薩を脇侍に配した釈迦三尊像。

その周囲には十大弟子と十六羅漢、そして背後には491基の羅漢像が並んでいます。見渡してみれば、どの石仏もみな表情・手の配置が違っていて、一つ一つに慰霊の心を込めて彫り上げたのだということがわかります。

御本尊・生身釈迦如来像

本堂向かって左側にあるのは「釈迦堂」です。
ここのお堂に安置されているのは大圓寺の御本尊佛「木造釈迦如来立像(1193 年・重要文化財)」です。

鎌倉時代初期に造立されたこの像の特異なところは像内に鏡・女性の髪・紙・木札などが収納されていたことで、このことから「生身(しょうじん)釈迦如来像」とも呼ばれています。

秘仏ゆえ普段は扉は固く閉じられていますが、この日は花まつりということで扉は開かれ、釈迦堂の前にはもちろん花御堂と誕生
仏が安置され、訪れる人々を歓迎してくれていました。
(釈迦如来像の御開帳日は年末年始・花まつり・甲子祭など、特別な日に限ります。)



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大圓寺の神仏・縁のある人物

本堂の右側にあるのは、阿弥陀三尊が祀られている阿弥陀堂があり、その手前には西運上人の石碑があります。

西運という名前を知っている人は殆どいないのではないかと思いますが、実はこの石碑はかの上人が僧となる前の名は吉三と言い、かの有名な「八百屋お七」と恋仲になった人のことなのです。

お七が吉三に恋い焦がれるあまり乱心し、放火という罪を犯して火あぶりになったあと、吉座は出家し、「西運」と名を改めました。

西運はお七の菩提を弔うため念仏を唱えながら諸国を行脚し、江戸に戻ってからは大圓寺そばの明王院(現ホテル雅叙園)に入って阿弥陀三尊を祀り、目黒から浅草寺まで隔夜日参り一万日の行
を27 年と5 ヶ月かけて成し遂げたのです。

その夜、西運の夢枕にお七が立ち、成仏したことを知らせたのでした。

その時のお七の姿を西運が木彫りの仏像として彫り上げたものが、「お七地蔵」として今でも阿弥陀堂に祀られています。

そして本堂そばでひときわ目を引くのが薬師如来坐像。

何が目を引くのかというと、この仏像、金ピカに光り輝いているのです!

この薬師如来像に金箔を貼ると、その場所の体の不調が治るというご利益が謳われているということで、怪我病気平癒を願う参詣
者がびっしりと貼った金箔が眩しいぐらいに輝いています。
(貼付用の金箔は社務所で授与されています。)

目黒不動尊、大圓寺と2 回にわたってお送りしてきましたが、どちらもとっても素晴らしいところでした。
是非またお参りしに行きたい気持ちでいっぱいです。

春真っ盛りのうららかな陽気の下、オシャレな街目黒までお出かけしてみるのはいかがでしょうか?

大圓寺へのアクセス

住所/〒153-0064 東京都目黒区下目黒1 丁目8 番5 号
交通/ JR・都営三田線・東京メトロ南北線・東急目黒線 目黒駅下車
電話番号/ 03-3491-2793



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