皆さま、初詣にお参りする場所はお決まりでしょうか?
近所の神社仏閣のほか、帰省して地元の氏神さまにお参りしたり、観光を兼ねて有名な神社やお寺に行ったりと、選択肢はさまざまですよね。

2025年の初詣に向けて、「ここより」では東京の「七福神めぐり」を取り上げます。
今回ご紹介するのは、“元祖”といわれる山手七福神を祀る6つの寺院。
目黒駅周辺から白金高輪エリアにかけて約5kmの道のりを歩きます。
各寺院間は徒歩10分程度と比較的近く、数ある七福神めぐりの中でもお参りしやすくなっています。

お参りのコースによってご利益が異なるのも魅力です。

『山手七福神めぐり』とは?

室町時代中頃に起こったという七福神信仰。“元祖”“江戸最初”といわれる山手七福神は、江戸城の裏鬼門守護のために将軍が鷹狩りに参詣した「目黒不動尊」こと、瀧泉寺(りゅうせんじ)の参詣道筋に設置されました。鬼門よけとなる谷中七福神と対になる、江戸時代の最も古い時期に始まった七福神めぐりです。
瀧泉寺・蟠龍寺・大圓寺にお参りしてから妙圓寺・瑞聖寺・覚林寺にお参りすると「商売繁盛」祈願になると言われています。反対にお参りすると、「無病息災・長寿」祈願ができるのだとか。ぜひ事前にルートを決めてお参りしてみてください!各寺院で「七福神ダルマ」(各500円)を求めるのも楽しみの一つです。



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『山手七福神めぐり』2025年の開催概要

開催期間:1月1日(水)〜7日(火)まで 
受付時間:9:00〜17:00(瀧泉寺および瑞聖寺の御朱印受付は9:00は〜16:30)
各寺院の浄書済みの色紙を、瀧泉寺と覚林寺にて頒布。1 部700円(御朱印500円、色紙200円)。それぞれ150部、計300部。予約不可。他の寺院では頒布がないので注意。
各寺院にて500円ずつ(妙圓寺は500円で福禄寿尊・寿老人尊の二尊)お納めすると、御朱印の判を押していただけます。こちらの色紙とは別に、各寺院での御朱印授与も行います。

『山手七福神めぐり』寺院一覧

瀧泉寺―恵比寿神
(距離&徒歩の目安:0.4km 10分)

蟠龍寺―辯才天
(距離&徒歩の目安:0.7km 10分)

大圓寺―大黒天
(距離&徒歩の目安:0.9km 10分)

妙圓寺―福禄寿尊・寿老人尊
(距離&徒歩の目安:0.5km 8分)

瑞聖寺―布袋尊
(距離&徒歩の目安:0.8km 8分)

覚林寺―毘沙門天
※距離は編集部調べ、徒歩の目安時間は公式パンフレットより引用

瀧泉寺―恵比寿神

「目黒不動尊」として広く崇敬を集める天台宗の瀧泉寺(りゅうせんじ)。
ご近所の方が“お不動さん”と呼んで親しむ、808年開創の古刹です。

仁王門をくぐるとひときわ目を引くのが「独鈷の瀧(とっこのたき)」。
瀧泉寺の開山・慈覚大師(じかくだいし)が独鈷という仏具を投げたところ、泉が湧いたのだそう。
年中絶えないこの水をすくって「水かけ不動明王」にお掛けし、お参りします。

仁王門に向かって左手に位置するのが、七福神の一柱、恵比寿神をお祀りする三福堂(さんぷくどう)です。
お前立ちの恵比寿さまは通年お参りすることができ、お正月の三が日にご開帳となります。
恵比寿さまと同じお堂に大黒天・弁財天がお祀りされているため「三福堂」と呼ぶのだそう。
両脇のお社では、豊川荼枳尼真天と福珠稲荷大明神がお祀りされています。

徳川家光公がこの地で鷹狩りの際行方不明になった鷹が、こちらでご祈願を行ったところぶじに戻ってきたという出来事から、幕府の手厚い保護を受け大きく発展します。

都心にあるとは思えないほど広大な境内には、御本尊の不動明王をはじめ、密教の神仏が至る所にお祀りされています。ぜひたっぷりと時間をとってお参りしたいお寺です。

広大な境内にはたくさんの仏さまがいらっしゃいます。

こちらは、ご本堂の裏手の大日如来像。未年・申年の人を守護してくださる守り本尊さまです。

こちらは、子年の守り本尊である観音さまをお祀りする「観音堂」。
ほかにも、すべての十二支の守り本尊さまが境内にお祀りされています。
ご家族やお友達を思いながらお参りしたりと、探検気分でゆったりと過ごしてみては。

瀧泉寺は、江戸時代にさつまいもの栽培を奨励し民衆を飢饉から救った“甘薯先生”こと青木昆陽のお墓があることでも知られます。
門前の「滝見茶屋」では、抹茶やご住職祈願済みの焼きいもをいただくことができます。寒空の下のお参りのお供に、ほっとひといき!

瀧泉寺 アクセス情報

瀧泉寺
目黒区下目黒3-20-26



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蟠龍寺―辯才天

お次は浄土宗のお寺、蟠龍寺(ばんりゅうじ)です。
“蟠龍”とは、水の底でとぐろを巻いて力を蓄えている龍という意味だそう。
その名の通り、境内の池や青々と茂る葉が、冬場にも立ち昇るようなみずみずしさを感じさせます。

ご本堂右手奥には「岩屋辯天(いわやべんてん)」が。
しっとりとしたミステリアスな雰囲気の洞窟の中に、辯才天がお祀りされています。
境内には音楽スタジオもあり、ミュージシャンもよくお参りしていかれるそうです。

美肌を願う人の信仰を集めているのが「おしろい地蔵」。
普段使っているファンデーションなどを持参してお地蔵さまにお化粧し、それを持ち帰りお守りのようにして日々使うと、お肌がきれいになるのだそうです!
ぜひ愛用の化粧品を用意してお参りしてみては。

また、ぜひ忘れずにお参りしたいのがこちら。
山手七福神が「元祖」と言われる所以となった岩屋辯才天の石碑です。
山門正面に見える石段を上がった右手にあり、「安永四年」「江戸裏鬼門鎮守」の文字が刻まれているのが見えます。

蟠龍寺 アクセス情報

蟠龍寺
目黒区下目黒3-4-4



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大圓寺―大黒天

急峻な「行人坂(ぎょうにんざか)」沿いに建つ天台宗のお寺、大圓寺(だいえんじ)。
修験僧・大海法印(たいかいほういん)の道場として、徳川幕府が軌道に乗り始めた元和年間に開創されました。

圧巻なのが、山門左手に見上げる五百羅漢像。
石工が5代に渡り刻み続けたもので、520体にものぼるといいます。
放火によるものといわれる「行人坂大火」(江戸三大大火の一つ)の火元となった大圓寺の焼け跡に、火事の犠牲者を弔うべく造られました。

島津藩の下屋敷から移されたものだというご本堂では、徳川家康公をモデルにしたといわれる「開運招福大黒天」が、福々しいお顔を浮かび上がらせています。
大黒さまの後ろにお控えするのは、藤原期の作ともいわれる十一面観音像。

ご住職のお話によれば、観音さまは、人間が祈願をする際に間を取り持ち、大黒さまから人間にもたらされる力を中和するような役割を果たしているのだとか。


十一面観音さまの両脇を固めるのは、密教の世界で観音さまを守護する不動明王と毘沙門天です。
2020年に修復を終えた十一面観音像は、調査の結果、使われている木の7割ほどが約1000年前のものだと判明したのだとか。
ほかにも、大圓寺の再興に尽力した薩摩藩祖「九嶋大明神」など、さまざまな神仏がお祀りされています。

お隣の釈迦堂では、七福神めぐり期間のほか、花まつりや甲子祭など限られた日程にご開帳される御本尊“生身釈迦如来”にお参りできます。
肌に張り付くような薄衣の表現が特徴で、胎内には五臓六腑が納められています。
800年前に作られたとは思えない美しいお姿の清凉寺式釈迦如来立像です。
実は、このお堂の厨子の中に、さきほどの大黒天像の御本体である三面大黒もお祀りされているのだそうです。

大圓寺―アクセス情報

大圓寺
目黒区下目黒1-8-5



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妙圓寺―福禄寿尊・寿老人尊

山手七福神のうち、福禄寿尊・寿老人尊の二尊をお祀りするのが日蓮宗の妙圓寺(みょうえんじ)。
いずれも古くは道教にルーツを持ち、南極老人星と呼ばれる星の化身で、人の運勢をお護りする神さまなのだそう。

福禄寿尊・寿老人尊がお祀りされているのは、境内の「妙見堂(みょうけんどう)」です。
室町時代の日忍上人は元々武士だった方で、北斗七星を神格化した開運の妙見大菩薩(みょうけんだいぼさつ)を屋敷にお祀りしたのがお寺のはじまりなのだそうです。

妙見堂の奥にお祀りされているお稲荷さまにも、ぜひお参りを!

妙圓寺 アクセス情報

妙圓寺
港区白金台3-17-5



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瑞聖寺―布袋尊

お次は、都内では珍しい黄檗宗(おうばくしゅう)の寺院、瑞聖寺(ずいしょうじ)です。
こちらは、布袋尊がお祀りされている大雄宝殿(だいおうほうでん)。
思わずあっと声を上げてしまいそうな雄大な光景に圧倒されます。

大雄宝殿中央の扉から布袋尊を拝めます。
四天王に守られた、にこやかでおおらかなお姿です。
七福神めぐりの期間には、布袋さまの前の扉が開いてよりゆったりとお参りができます。
御本尊のお釈迦さまの両脇には、十大弟子である阿難(あなん)尊者と迦葉(かしょう)尊者の像が並びます。

円窓や、木魚の原型だという開梆(かいぱん)という鳴らし物も見どころ。
すがすがしい空気の中で禅宗寺院の建築を存分に味わうことができます。

隈研吾氏が設計を手がけた庫裡からの眺めも素晴らしく、ぜひぐるりと一周してお参りを。

瑞聖寺 アクセス情報

瑞聖寺
港区白金台3-2-19



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覚林寺―毘沙門天

今回最後にご紹介するのは、毘沙門天をお祀りする日蓮宗のお寺、覚林寺(かくりんじ)です。

江戸末期に築かれた山門をくぐると、左手に「毘沙門堂」が。
覚林寺でお祀りされる毘沙門天は、日蓮宗で御本尊とする曼荼羅の左上に描かれ、北を守護する神さまです。

境内でひときわ目を引くのは、豊臣秀吉の家臣であり、熱心な法華経の信者だった加藤清正公を祀る「清正公堂(せいしょうこうどう)」です。“せいしょうこうさま”とも“せいしょこさん”とも呼ばれ崇敬される清正公をお祀りしています。

熊本藩主であった清正公がなぜこの地でお祀りされているのかというと、こんなストーリーが。清正公が豊臣秀吉の命で朝鮮半島に出兵した際、ある地方の王族のお子さんを連れ帰り、熊本で大切に養育します。そのお子さんはのちに出家して日延(にちえん)という名の僧となり、安房小湊の誕生寺の住職を務めました。

その日延上人が、晩年に幕府から水仙畑としてこの土地を下賜されます。
その一角に、清正公の遺徳をしのんで開創したのが覚林寺なのだそうです。

覚林寺 アクセス情報

覚林寺
港区白金台1-1-47

『山手七福神めぐり』まとめ

コンパクトなエリアにダイナミックな風景が広がる

ほぼ道なりに進んでいけばすべてのお寺を巡ることができ、わかりやすく短時間で回れるコースになっているのが山手七福神めぐりの特徴。
それでいて、見どころの多い大きな寺院を有しているのも魅力です。
大圓寺前の行人坂や、階段の多い瀧泉寺があるので、歩きやすい靴で訪れることをおすすめします!
瀧泉寺から回って「商売繁盛」を願うか、それとも覚林寺からお参りして「無病息災・長寿」を祈願するか。
年末に一年を振り返りながら、「新年はどちらのコースで回ろうかな?」と考えるのも楽しみです!



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