目次
浄土宗総合研究所が「墓じまい」に関するシンポジウムを実施
2025年2月10日(月)に、浄土宗総合研究所が主催するシンポジウムが行われました。
テーマは、いまやエンディング関連の最大の関心事である「墓じまい」です。
会場には77名、オンラインに254名が集まり、社会学者、過疎地の住職、海洋散骨業者、弁護士、ジャーナリストが、専門分野の立場から「墓じまい」について語りました。
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各分野の専門家が「墓じまい」の現状について解説
詳細
タイトル:【令和6年度】浄土宗総合研究所(東京)シンポジウム「墓じまい」を考える
日時:令和7年2月10日(月) 13時~16時30分
場所:大本山増上寺 光摂殿講堂 *オンライン併用
◆基調講演 テーマ「なぜ今、墓じまいなのか?」
井上治代氏(元・東洋大学教授、NPO法人エンディングセンター理事長)
◆パネリスト登壇
・テーマ「過疎地域における墓じまい」
西村昭仁上人(石見教区長福寺住職・宗議会議員)
・テーマ「都市部における墓じまいの現状と新たな墓の動向」
赤羽真聡氏(鎌倉新書常務執行役員付、株式会社ハウスボートクラブ代表取締役社長)
・テーマ「墓じまいに伴う諸問題 法律的視点から」
齊藤善隆上人(弁護士、長野教区天然寺副住職)
・テーマ「墓じまいの功罪 –弔いの喪失がもたらすもの–」
鵜飼秀徳上人(ジャーナリスト、京都教区正覚寺住職)
◆パネリストによるディスカッション
コーディネーター:名和清隆(浄土宗総合研究所研究員)
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「墓じまい」「葬送の希薄化」の流れをどうとどめるのか
【登壇者の講演要旨】
井上治代氏
(元・東洋大学教授、NPO法人エンディングセンター理事長)
・高度成長時代は、地方から都市へ人口移動がなされた
・少子高齢化の現在は、遺骨移動が始まっている
・コロナ以降、改葬件数が急増している。2021年約119万件→2023年約167件
・遺骨の移動は主に①地方→都会 ②地方→地方 ③都会→都会
・①地方→都会 両親の墓を自分たちの墓へ
・②地方→地方 集落の一般墓から納骨堂や樹木葬へ
・③都会→都会 郊外の墓園から非継承墓へ
・今後、墓じまい、遺骨移動の流れはとめられない
・寺はひとり世帯の心の支えという新たな役割を担う必要がある
西村昭仁上人
(石見教区長福寺住職・宗議会議員)
・島根県大田市羽根地区の人口推移は、2024年1,119人→2054年559人。半減する
・地元に就職先がなく、若者は都市部へ流出せざるをえない
・少子高齢化が進み、墓じまいが加速している
・団塊の世代は「子どもたちに迷惑をかけたくない」との思いが強い
・寺の住職として、檀家の宗教への想い、寺への想いが変わってきたと実感している
・山間部にある墓から寺の境内にある永代供養墓へ移動している
・地域の33カ寺中、20カ寺が永代供養墓を建てている
・永代供養墓、合祀墓に納骨した葬家は、以降は共同墓を家族の墓として利用する
赤羽真聡氏
(鎌倉新書常務執行役員付、株式会社ハウスボートクラブ代表取締役社長)
・墓じまいは年間16万件を超えてきた
・墓じまいの主な理由は「墓が遠方にある」「墓の継承者がいない」
・鎌倉新書の調査によると、新たに墓を購入する際、「一般墓」21.8%、「樹木葬」48.7%
・樹木葬を選んだ理由の多くは「継承者不要」であること
・多様化する埋葬先のひとつに海洋散骨がある
・海洋散骨とは、祭祀の目的をもって、遺骨を粉骨し海面に散布、投下する行為
・現在は年間1万~1万5千件
・自然葬が好まれる風潮にマッチしている
齊藤善隆上人
(弁護士、長野教区天然寺副住職)
・墓に関する法律は、墓地埋葬法、民放(897条)、刑法(189条他)、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、海上運輸法などがある
・墓地埋葬法は70年前に制定されており、社会情勢の変化に対応していない
・墓じまいに関する主なトラブルに「離檀料」「使用者不明墓地の改葬」がある
・寺院は墓じまいに際して、離檀料を請求することは、法令上の根拠がなく、できない
・ただし、過去に合意(契約)がある、離檀の際に双方が合意した場合は請求できる
・墓の使用者が不明で、寺が墓地を撤去した場合、損害賠償を請求されることがある
・今後の寺の運営に際して、墓地の使用規約、檀信徒規約を定める等、予防的措置を取っておくことが最善
鵜飼秀徳上人
(ジャーナリスト、京都教区正覚寺住職)
・歴史的に見ると、日本人は墓に関して「厚儀」「薄儀」「厚儀」「薄儀」を繰り返してきた
・時の天皇が、自らの葬儀、墓のあり方についてのこだわりが、「厚儀」「薄儀」(のトレンド)を左右している
・近代においては明治時代の「国家神道」と、大戦で死亡した兵士の英霊を弔う風潮など「厚儀」の時代になった
・葬儀の簡素化が始まり、現在は再び「薄儀」の時代に入っている
・高齢化により喪家、弔問者双方の人間関係の分断があり、葬送の簡素化はとまらない
・ただ、再び「厚儀」の時代が来る
・寺は中長期的な弔いのあり方を考える必要がある
・調査によると、墓参りをする習慣がある地域の「犯罪率が低い」「若者は利他心が強い」などの傾向がある
・東農大が行った学生アンケートによると「墓は必要80%強」「墓をずっと守りたい63%」のデータが出ている
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立正大学仏教学部卒業。東京仏教学院卒業。浄土真宗本願寺派僧侶。
宗教の基礎知識、心のサポート、終活のサポートなど、こころのよりどころとなる情報を楽しくわかりやすく発信します!