「学校が死ぬほどつらい子は、図書館へいらっしゃい」

数年前、こんなニュースがありました。
9月1日に、自ら死を選んでしまう学生が、非常に多いそうなのです。
夏休みの間、学校でのストレスから解放されていた子どもたちが、休みが明けるとともに自死を選んでしまう傾向がある、というのです。

なんて悲しいニュースなのだろう、と思いながらテレビを見ていたら、このニュースにはまだ続きがありました。
「そんな中、鎌倉市のある図書館司書の、ツイッターの投稿が注目を浴びています」

「学校が死ぬほどつらい子は、図書館へいらっしゃい」
「一日いても、誰も何も言わないよ」
「死んじゃおう、と思ったら、逃げ場所に図書館も思い出してね」

このツイートは、「感動した」「あの頃の私に聞かせてやりたい」と、瞬く間に全国に広まりました。
「生きづらい」と感じている学生たちのために、図書館が立ち上がったのです。
これはまさに、現代の駆け込み寺といえるのではないでしょうか。

お坊さんの役割

現在、仏教界(宗教界ですね)は深刻な状況を迎えています。 もともと言われていた「仏教離れ」「お寺離れ」に加え、現在では「宗教アレルギー」とも言われはじめ、世間からの風当たりは強くなる一方です。

一方で、「御朱印ブーム」は衰えをみせませんし、お坊さん相談サイト「hasunoha」へのアクセスも増えていると聞きます。「終活」の準備を進めている人も多いですし、お坊さんの出版物なども一定の需要があります。
ここよりファミリーの光澤さんも新刊を出版されました。

残される人たちのため、自分が死んだあとの準備を進めたり、心を落ち着けるために仏教関連の本を読んだり、お寺を訪れたりする人も増えています。 ほんの少しですが、このように状況が上向きはじめたのも、少しでも「仏教離れ」を防ごうと、もがいてきたお坊さんたちの尽力があったからだと思っています。

それでも、まだまだ私は、「本当に仏教が必要な人」に、仏教を伝えきれていない、と思っています。世の中を「生きづらいなあ」と思っている人たちに、少しでも、そこから脱出するヒントをつかんでもらえるようにするのも、仏教、そして宗教の意義のひとつなのです。

本来の「お寺」の意味

「葬式仏教」などとも言われ、お寺が本来の意味を失いつつある中で、先述の図書館司書のツイートは、私の心を打ちました。
亡くなった人を供養するのも、とても大切なお寺としての意義ですが、本来は、生きている人が、「より過ごしやすくなるように」「より幸せを感じられるように」、その場所にあり続ける、という事も、お寺の大事な役割のひとつなのです。

「ここより」は、「あなたによりそう、こころのお寺」を目指して、日々、お坊さんをはじめとする宗教者たちの思いや、神社仏閣の情報、そして仏教の質問箱などを掲載しています。
世の中を「生きづらい」と感じている人たちが、いつでも駆け込んでこられるよう、できるだけ門を広く開けておくことを心がけておりますので、いつでも気軽に遊びにきてくださいね。

ここより チーフ・エディター
佐山拓郎

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