
「家族で考えた文字」「俗名も入れてほしい」
葬儀社から葬儀の依頼があり、喪主にご挨拶の電話を入れた時のこと。
「院号法名をつけていただきたい」と依頼されたので、故人の人となり、出身地や仕事、家族との関わりなどを、細かくヒアリングした。
「承知いたしました。住職とよく相談して」と、話し始めた時だった。
突然、喪主から、
「院号は故人の父親と同じものにしたい」
「法名には家族で考えた●を入れてほしい」
と圧強めに言われた。
さらに
「俗名から一文字も入れてほしい」
とも。
喪主の希望を聞くと、寺の入る余地なし
浄土真宗の法名は、通常三文字。
すべての法名の先頭文字はお釈迦様の仏弟子になるとの意で「釋」をつける。
残りの二文字で故人にふさわしい言葉を聖典や経文から頂く。
喪主の希望を聞くと、家族で考えた「●」と俗名一文字で、法名は完結してしまう。
しかも、院号が父親と同じものなら、寺の入る余地はない。
そして、喪主からとどめのひと言。
「葬儀社から院号法名代は○○万円と聞いていますが…」
その言葉の裏には
『喪家がほぼ決めたのに、そんなに取られるのですか?』
というニュアンスが滲んでいた。
「住職とよく相談してご法名をつけさせていただきます」とだけ伝えると、這う這うの体で電話を切った。
葬儀当日、ご喪家に院号法名をお伝えした。
ご喪家の希望通りの院号法名にならなかったことは言うまでもない。