ただし、片方の意見に偏ることにも反対します。
ロシア軍によるウクライナ侵攻が始まってから、ひと月以上が経過しました。
問題の解決のために武力が用いられ、世界を巻き込んだ戦争となってしまった事について、大変残念な思いです。
犠牲になった地域や、大勢の人々に対し、哀悼の意をささげるとともに、一刻も早く平和が訪れるよう、願っております。
お釈迦さまは、「物事には必ず原因があり、そこを明らかにすることで問題は消え去っていく」と仰っています。
今回の件にも、私たちには計り知れないほどの原因が、あったのでしょう。
きっと、たくさんの原因が積み重なり、均衡を保てなくなった結果が、今なのでしょう。
誰かの意見だけを尊重しようとすると、そこには軋轢が生まれます。
人には、それぞれの事情があるからです。
誰にだって、意見が合わない人はいるし、嫌いな人だっています。
だから、人は、ほんの少しずつでいいので、自分以外の人に気を遣いながら過ごしていかなければならないのです。
そうして、自分やまわりの平和を作っていくことで、いつしかそれが広がっていきます。
「遠くの出来事だ」と思う人もいるかもしれませんが、私たちも、自分のまわりから少しずつ穏やかにしていけるよう、考える事が大事なのです。
いくら嫌いな人であっても、他人の大事な人を揶揄するような発言をしてはいけないし、大事な人が侮辱されたからといって、問答無用に暴力をふるうなど、もってのほかなのです。
戦争は、どちらにとっても譲れないものがあるために起こります。
他人の事を思いやり、「なぜこの人はこのような言動をとるのだろう?」と慮る事で、相手が「譲れない」と考えている事を知り、お互いが少しずつ歩み寄る事ができれば、争いごとは減っていくでしょう。
難しいことのようですが、それが平和への第一歩です。
プーチンにもゼレンスキーにも、それぞれの軍隊にも、巻き込まれた一般市民にも、ベラルーシをはじめとした関係諸国にも、事情はあります。
誰かひとりが悪いのではなく、様々な事が積み重なって、現状ができあがります。
どちらかが一方的に悪い訳ではありません。
武力行使について賛成する事はできませんが、なぜそこに至ったのか、という事情については、考えなければならないと思っています。
そこを明らかにする考え方が、お釈迦さまの説かれた「中道」です。
どちらにも偏らず、かといって「ど真ん中をまっすぐ」とも限らない道。
難しいようですが、そこを見極めながら、まわりと相和して進んでいくのが「仏教」だと思っています。
繰り返しになりますが、この戦争に一日でも早く終止符が打たれ、世界が穏やかな光で包まれることを、心から願います。
合掌
令和4年 4月11日
ここより チーフエディター
佐山拓郎
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立正大学仏教学部卒業。東京仏教学院卒業。浄土真宗本願寺派僧侶。
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