【折兄さんの食縁日記】第2回 以之貫:仏壇に供えるのは別に○○でなくても良い ~福岡~
皆様こんにちは、折兄さんです。
二回目の投稿になりますが、新潟の次に頂いたご縁は福岡になります。
この福岡での依頼は同じ曹洞宗の和尚さんからで、『檀家さん達を対象に催しをしたい』という物でありました。
時間が掛かるいくつかを真空パックやジップロックに詰め、包丁その他が入ったトランクと一緒にいざ九州へ。
日本でも突出して市街地から近い福岡空港から向かったお寺は、古くは炭鉱として栄え、今でもその名残がある町でした。
大凡30人前を作るご依頼であったので、キッチンの確認をした後当日の打ち合わせ、手伝っていただけるスタッフさんとの顔合わせも大体は前日か当日に行われます。
檀家さんを対象としておりましたので、参加予定の皆様は平均年齢が結構お高め…正直和食じゃないと厳しいかな?と思っておりました。
しかしご依頼のご住職様からのご要望もありまして、良しそれならと、あえて洋食を盛り付けるという形に。
参加者の方々と、お手伝いに参加していただいたスタッフの皆様は顔見知りも多くおりましたので、都内で行う催しと違いここでは交流イベントのような形になります。
そんな中、どことなく不安げな表情を浮かべるおばあちゃんが1人。
どうやら参加者用ではなくこのお寺の本尊様に上げる器に盛り付けられる事が気になるご様子。
(当然ながら参加者と同じ料理が盛り付けられます)
仏さまにお供えするもの=和食は全国共通の事で、大体は白米に味噌汁、煮物…とこんな形が一般的でしょうか。
ですが和食でなければいけないなんて決まりはないんですね。
という訳でこの時は盛り付けられていたご飯のポジションにはトマトペンネが、味噌汁部分にはミネストローネと、何ともカラフルな盛り付けがされておりましたが、『そんなのお出しして大丈夫なんですか?』となったわけです。
ですので『「あっち」の人だってたまには煮物や白米じゃなくてパンとコーヒーも食べたいというかもしれませんよ?バチが当たるなら真っ先に自分に当たってます』
と言った所大笑いしてから全員完食して頂きました、万歳!
伝統を引き継ぎ、歴史を繋いでいく際、最も単純な方法は『言われた通りにやる』ことでしょう。
それは勿論大切で、必要ななことではありますが、人の営みも価値観も日々変化し、現代はそれが加速度的に進んでおります。
新しい要素を組み入れるか、そのまま引き継ぐか、どちらかを切り捨てるのではなくどちらも自分のものとして受け入れ、それを楽しんでみると、思いもよらないモノが生まれ、それが新しい考えとして広がっていきます。
ですがそれは決して過去の考えや風習が風化するものではなく、『これがあったからこれを作る事が出来た』と立ち返る事の出来る喜びになるのでしょうね。
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曹洞宗僧侶。和尚さんと料理人そして精進料理の先生として活躍中。旅する中で得た縁のお話を楽しい雰囲気で執筆中。