滞在の前半部分は、現地スタッフと国際部のミーティングばかりなので割愛するが、こちらにおいて、日本と最大の相違点は、箱モノに対する制約の少なさだと確信している。
というのも、仏具屋なんて気の利いたものは殆どないし、社寺建築なんてものは単語すらない。
要するに「事情を知らないプロ大工<事情に精通している坊主の日曜大工」がまかり通ってしまうのだ。
木材機材はいくらでもある。
スマホとメジャーを駆使して寸法と写真を撮り、ここにこういう物を作って、と決めたら製作。
間違っていたらその場で修正。トライアルエラーである。

大掃除と準備が終わると、先行組と各国の国際支部、現地スタッフで配役決めが始まる。
この辺も実に大雑把というか、基本、班分けはするが、実際に詳細が決まるのは到着後。
現地で決めて現地で練習→当然、しょっちゅう不備が出るので都度修正。これが基本であり、そのため「ある程度実務経験あり+多少なりとも現地の事情を知っている人」しか呼ばれないのだ。
さて私は、こういう場合鳴らし物が多い。
これは法要中、立ち位置的に一番「外側」から進行を見られる事と、主要ポジションに知り合いが多い場合、補助的なタイムキーパーができるからだ。

「じゃあ今日はこれで終わり!」
夕方4時、全体の指揮をとっていたベテランの一声で、前日準備は終了となった。

「How is Hawaii after a long absence? (久しぶりのハワイはどうだい?)」
「Best for. But I could get to the beach a bit more. (最高さ。ただもう少しビーチに行きたい)」
「Then come on a trip next time. (じゃ、次は旅行で来い)」
こんな軽口が言える程度には、私も成長したらしい。

さて、ハワイの式典は2日間に分けて行われるが、初日は慰霊法要がメインになるため、本番は2日目になる。
曹洞宗の法要の中では、色々と複雑な(修行道場の僧侶たちが地獄を見る)18拝差定というものがあるが、初見で配役を完遂するのはまぁ無理のため、主要配役は日本出身の経験者が行う。
簡単に言えば、18拝とは、法要中に御導師(本堂中央に座る法要の主役)がお拝をする回数なのだが、正確には3拝×6回で、それぞれ

上香三拝(線香)
湯食三拝(甘いお湯)
嚫金菓三拝(お金と菓子)
上香三拝(線香)
献茶三拝(お茶)
中揖三拝(諸々お召し上がりください)

このように、お供えされる品物と意味合いが分かれています。

※マニアックな話になりましたが、大概この法要をする際にはナレーションが入るので、余裕がある人は耳を傾けてみるといいですよ

法要は、どうやっても人が足りないので、他のエリアから来られる僧侶の方たちに手伝っていただくのだが、この国際部の僧侶たち、ほぼ初見の所作を数回の練習で大まかにコピーできるのだ。
恐ろしいのはそのスキルではなく、肝の据わり方と本番までのリラックスぶり。
この辺は、規律に縛られがちな日本にはない大らかさで、我々が真似しなければならない所だろう。余計な力が入らない上での集中なので、吸収率が半端じゃないのだ。

トラブルがない訳ではなかったが、2日間の法要は無事に終了。
数時間で片づけを終わらせ、翌日には日本に帰る。
打ち上げまでの空き時間を、ホテルのベッドで寝転んでいると、BGM代わりにつけていたテレビでは、ワールドシリーズの真っ最中だ。
日本では大谷翔平ばかりを取り上げるが、アメリカでは当然こちらの注目度の方が高い。
国が変われば、注目されるものも、重要視されるものも変わってくる。
引きこもっていると、つい忘れてしまうが、これは全ての事柄でそうなのだろう。だから私は旅が好きだ。

偏西風に逆らって進む帰りの機内で、この縁はこの後どこに繋がるのか、ひとり空想するのだった。


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