NHK朝ドラ「カムカムエヴリバディ」を名セリフで振り返る

先日最終回を迎えた、NHK朝ドラ「カムカムエヴリバディ」。
日本初のラジオ放送が開始された日に生まれた女の子から始まった、100年の家族の物語は、丁寧な脚本と見事な演出で、視聴者の感動を呼びました。

ここでは、物語から生まれた数々の名言を、仏教的に振り返ってみたいと思います。

ドラマを観ていた人はもちろん、観ていなかった人も、ぜひご覧になっていってください。

きっとあなたを、思いもよらないところまで連れていってくれますよ。

「ひなたの道を歩けば、きっと人生は輝くよ」

ずっと物語の肝であり続けた「ひなたの道」というキーワード。
3代目ヒロイン「ひなた」の名の由来であることはもちろん、2代目ヒロイン「るい」も、「オン・ザ・サニーサイド・オブ・ザ・ストリート」を歌ったジャズミュージシャン、「ルイ・アームストロング」から命名されています。

ふたりとも、「ひなたの道を歩いて欲しい」という親心から名づけられました。

出征したまま帰らぬ人となった父の稔。
そして、様々な事情にとらわれ、自分の意思とはかけ離れた道を歩まなければならなかった母、安子の思いが「るい」には込められています。

そして、きっとその由来を知らないまま育った「るい」は、戦災孤児だった、トランぺッターの「錠一郎」と出会い、恋をして、「一緒にひなたの道を歩いていきたい」と共鳴しあうのです。

錠一郎とるいの子「ひなた」も、その名の通り、自分の意志で人生を切り開いていきます。

浄土宗では「選択(せんちゃく)」と「共生(ともいき)」という言葉を大切にしています。

「選択」は、自分で道を選びとること。
そして、選びとった道で全力を尽くすことです。

選んだ道で全力を尽くせば、その道は仏さまが守ってくださっています。

ひなたに別れを告げた文四郎に、トミー北沢のCDを渡したジョーがかけた言葉。

「今後、何があっても、それが自分の選んだ道なら、君にとってのひなたの道になる。人生はきっと輝くよ」

まさしくこれが、「選択」を表しているのです。

次に「共生」。
今の時代を生きる者同士が、力を合わせて、共に生きていくこともそうですが、ご先祖さまなどの先人が思いを後世に伝え、受け取った人たちが、その思いを胸に生きていくことも「共生」です。

「るい」も「ひなた」も、稔や安子から繋がる思いを受け取り、その通りにひなたの道を歩くことができました。

「カムカムエヴリバディ」は「共生」のドラマです。

安子・るい・ひなたのヒロインたちはもちろん、ジャズ喫茶のマスターだった定一さんの思いを受け継いだ錠一郎や、父親が亡くなってから自分へのエールに気づいた2代目モモケンや、初恋が実らなかった者同士の勇おじさんと桃太郎などなど。

すべて、過去から未来へと続く「共生」といえます。

時代劇役者への道を諦めた文四郎に、虚無蔵がかけた「どこで何をして生きようと、お前が鍛錬し、培い、身につけたものはお前のもの。
決して奪われることはない。一生の宝とせよ」という言葉もそうです。

文四郎は、この言葉を胸にひなたの道を歩いた結果、世界的なアクション監督になりました。

みんな、それぞれの「ひなたの道」の中で、自分らしく歩いてきた結果、人生を輝かせてきたのです。

「日々鍛錬し、いつ来るともわからぬ機会に備えよ」

映画村にいた大部屋俳優、伴虚無蔵(ばん きょむぞう)の言葉です。
この言葉に触発されたひなたは、ラジオの英語講座をコツコツと続け、通訳と間違われるくらいまでに英語の実力を上げました。

同じ大部屋俳優だった文四郎も、時代劇俳優という道を諦めはしたものの、きっとこの言葉を忘れずに頑張り、アクション監督として大成しました。

言うのは簡単ですが、本当に「いつ来るともわからない機会」に備えるのは大変なことです。

ひなたも、実際に英語が役立つまでには、何度も挫折を味わいました。

人間どうしても、物事に直面しないとやる気が起こらないものなのです。

仏教では、「過去も未来も、頭の中にしかない」と考えます。
自分の力で変えることができるのは「今」だけだからです。

誰でも、いつかは命の終わりがきます。
そしてそれは、いつ自分の身に降りかかってくるかわかりません。
朝、元気に家を出ても、事故や災害に巻き込まれてしまうことだってあります。

だから人は、その時その時を、後悔のないように過ごさなければならないのです。

いつやってくるかわからない「死」の前に、自分にとっての「ひなたの道」を見つけ、その道を全力で進んで行くことで、人生は輝きます。

そしてそれを続けることで、いつしか自分が「思いもよらないところまで」到達しているのです。

この言葉が重たいのは、虚無蔵が実際にこれを実践していたからです。

若い頃に抜擢された映画で、演技力不足を痛感した虚無蔵は、その後20年ものあいだ、ずっと和装に身を包み、普段も時代劇言葉を使い続けていました。

殺陣の稽古も欠かしませんでした。
それが「サムライ・ベースボール」での抜擢に繋がったのは、言うまでもないでしょう。

ほかにも、数々の名言あり

「暗闇でしか見えぬものがある。暗闇でしか、聴こえぬ歌がある」

「小豆の声を聞け。何をして欲しいか、小豆が教えてくれる」

「意味があんのか、ないのか、わからんことをやる。誰かのことを思ってやる。それでええんとちゃう?」

「いいんです。みんな間違うんです」

「足袋は雉真の1番バッターじゃ」

などなど、「カムカムエヴリバディ」には他にも数々の名言があります。

一見すると、仏教とは関係のない言葉だと思うかもしれませんが、仏教とは、人生を積み重ねていく中で、自分なりの哲学を築いていくことです。

誰でも、自分の人生にしかない「選択」があり、そして、選びとった道を「ひなたの道」にしていく権利があります。

だから、それぞれの言葉の中に、それぞれの人生が表れているのです。
つまり、それが仏教です。

私たちも、この言葉を胸に、「カムカムエヴリバディ」の登場人物たちのように、「ひなたの道」を歩いていきたいものです。

「君と、君の大切な人が幸せである、そのために」

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