みなさん、はじめまして。大竹稽です。
フランス哲学を専門にしていますが、ここ数年は、仏教を学びながら哲学しています。
哲学っていうと、だいたい西欧の哲学を指しますよね。
そのため哲学者たちの参照先、あるいは哲学者たちが批判するのはキリスト教でした。
とはいえ、ニーチェ以降、特にフランスの哲学者たちが「仏教」に興味を持ち始め、しばしば来日し、日本独特の教えに触れています。
そんなこんなで、先輩の哲学者たちに導かれるように、日本人なのに十年ほどうっかり忘れていた仏教に回帰しながら、哲学しています。
チーフ・エディターの佐山さんとは、目黒のほうで「てらてつ(お寺で哲学する)」を共催していました。
この風景、懐かしいですねぇ。
撮影者がわたしなので写っていませんが、ちゃんと佐山さんの横で参加された方々と、楽しく哲学していましたよ。
この会では、日本昔ばなしや寓話を活用していました。
例えば、イソップ寓話の『北風と太陽』
みなさん、ご存知ですよね。念のために、日本語訳を紹介しましょう。
「北風と太陽が、どちらが強いかで言い争いをした。
道行く人の服を脱がせたほうを勝ちにすることにして、北風から始めた。
強く吹きつけたところ男はしっかり着物をおさえる。
北風はさらに勢いを強める。
男は寒くなればなるほど服を重ねて着込んでいく。
とうとう北風は疲れ果てて、太陽に番を譲った。
太陽は穏やかに照り始めた。
すると男が服を脱ぎ始めた。
太陽はだんだん熱を強めていった。
男は暑さに耐えかねて、素っ裸になって川に飛び込んだ。
説得が強制よりもしばしば有効になる、とこの話は説き明かしている」
この話をテスト問題として利用する、なんて先生の立場になってみましょうか。
きっと、あなたもこんな風に釘を刺すのではないでしょうか。
「きみたち、最後の教訓が大事なんです。
強制で人間を動かすことは下策。
ちゃんと話をして、納得させた上で、動かさなければなりません。
これを覚えておきましょう。
テストに出ますよ」
こうなると、北風くんや太陽さんの立場や発言など、もはや刺身のつま以下になってしまうでしょう。
「服を脱がせた方が勝ち。この判定にすでにワナがないですか?」
「でも、なぜ北風くんからはじめたのでしょう?その時点で、太陽の勝ち確定じゃないですか?」
「服を着込むって、偶然にしてはよくそんなに持っていたよね」
なんて、たわいもない疑問をネタにしながら、みんなでワイワイ対話したものです。
対話をしながら、テーマもどんどん深まっていきました。
ちなみに、目黒での「てらてつ」は中断してしまいましたが、鎌倉、浅草、港区三田の三ヶ寺では、張り切って継続中です。
こちらをご覧ください↓
〈てらてつオフィシャルサイト〉
一度、遊びに来てくださいな。
そうそう、「遊び」。
「遊びの哲学」、これがわたしの本命です。
「遊び」ってなんでしょうね。
哲学者たちの中にも、少数ながら「遊び」を徹底的に分析した人たちがいます。
ヨハン・ホイジンガとかロジェ・カイヨワが有名ですね。
彼らの議論を整理しておきましょう。
遊びは、「役立つ」とか「価値基準」とかから外れている。
遊びには「生産性」は無縁。
遊びへの参加は、常に自由。
そしてある意味、ナンセンスなことをしてしまう。これが「遊び」です。
テストなんか関係ないところ、先生たちも困ってしまうようなところに目を留め、そこからじっくりゆったり思考を深めていく。
こんな時代だからこそ、ナンセンスな時間が貴重なのではないでしょうか?
ナンセンスで尊い時間を学べるもの、その代表が、宗教と哲学だと考えています。
哲学では、世間の価値に合わせない考えも大歓迎です。
むしろ、それが起点になります。
同じく宗教は、世間の評価や役割から外れること、それらを超えることもまた人生であることを、教えるものではないでしょうか。
ということで、わたしは仏教的哲学者としてのミッションを担っています。
そんなわたしは、2021の年末に、こんな本を出しました。
ここで紹介している「遊び」の視点に、わたしが考える未来が示唆されています。
こちらの本も合わせて、おつきあいくださいね。
さて、「ここより」さの記事で、単なる哲学概紹の紹介など、決してしません。
それは難しいのが得意で好きな方々にお任せしましょう。
わたしは難しいのか嫌い。
哲学でもワクワクして、晴れやかな顔にならなきゃ。
これ、私淑するモンテーニュの受け売りです。
わたしは哲学で遊びます。
そのため、テキストも、みなさんに馴染んでいるものを活用します。
それが『日本昔ばなし』
これからみなさんといっしょに、『桃太郎』や『笠地蔵』や『舌切り雀』や『聞き耳頭巾』などを使って、哲学で遊びコツを伝授していきます。
それではまた近いうちに。
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哲学者、教育者。旭丘高校から東京大学理科三類に入学。大手予備校に勤務しながら子供たちと哲学対話を始める。三十代後半で、再度、東京大学大学院に入学し、フランス思想を研究。東京都港区三田や鎌倉での哲学教室、教育者としての活動は学習塾や、三田や鎌倉での作文教室を開催中。