地獄行きチケット、お坊さん2枚

彼岸も近づいたある日、私は「ここよりファミリー」の向井さんと、横浜の東戸塚駅にいました。
以前からお付き合いのある、日蓮宗妙法寺ご住職の、久住謙昭上人が完成させた「地獄VR」を体験するためです。

仏教(ほかの宗教でも)において、悪いことをした者が、死後に行くとされる「地獄」。久住上人は、3年前から「最新技術の『VR』で地獄を表現したい」という着想を持っており、私もその話を聞いていました。
完成した、という噂は耳に入っていましたが、タイミングが合わずになかなか訪問できなかったところ、向井さんから嬉しいお誘いがあり、ついに見学できることになったのです。

私は、どこか浮ついた気持ちで妙法寺の門をくぐりました。これから地獄へ行くというのに。

700年の歴史をもつ寺院「妙法寺」

ぐるっと境内を見回すと、「どうぞご自由にお掃除ください」という立て札が目に入りました。よく見ると何本か竹箒が立てかけてあり、落ち葉を掃除している人もいます。
参拝者に「掃除」という「布施」を行ってもらうことで、自然と徳を積んでもらいながら、境内も清潔に保ててしまうという、素晴らしいシステムです。

向井さんが、おもむろに箒を手に取り、落ち葉を掃除し始めました。禅の血が騒いだのかもしれません。
私は、浮ついた気持ちのまま、しばらく空気を堪能していましたが、そうしているうちに久住上人から見つかり、向井さんとともに、本堂へ案内されることになりました。

いざ地獄へ

地獄体験は、まず久住上人による法話から始まりました。
一応僧侶である私にとって、知識として知っていることも、久住上人の語りで聞くことで、あらためて心に染み入ってきました。
「自分は、今までに、どんなことをしてきただろうか」と、御本尊を前に考えながら、地獄についての話を聞いていました。

そしていよいよ、「地獄VR」の始まりです。
ゴーグルを頭にかけると、あっという間に「地獄」の世界に連れ込まれました。
ネタバレになってしまうため、詳しい内容について、ここでは触れませんが、導入部分の動画がありますので、雰囲気を感じてみてください。

少しだけ感想をお伝えすると、色鮮やかな映像の中に、きちんと「地獄のおそろしさ」を感じることのできる作りになっており、「やはり悪いことはしたくない」と思わされました。
VRですので、後ろや天地にも細かなポイントが散りばめられており、一度ではすべて見ることはできませんでした。何度か分けての体験をお勧めします。

懺悔する

VR視聴後は、御本尊の前で「懺悔(さんげ)」させていただきました。
3分間の瞑想中に、今まで自分が犯してきた罪を見つめ、心から懺悔します。懺悔文を読んだあと、「懺法(せんぼう)」と書いてある用紙型の線香に、自らの罪を記して、香炉にくべました。

映像を観る前は、「なんとなくこんな事を書いておこう」と思っていた軽めの罪があったのですが、VRとはいえ、一度地獄へ堕ちた経験をしたことで、脳が刺激され、ふだん意識もしていなかったような「思ってもいなかった罪」を思い出してしまい、それを書くはめになりました。
ここで意識してしまった事によって、私は今後、この罪とずっと向き合いながら生きていかねばならなくなりました。しかし「懺悔」というのはそういうものなのです。

思ってもいなかった、私の「重い罪」を香炉にくべ、参加者による感想戦が行われて(普段はアンケート用紙に感想を書くのみのようですが、この日は参加人数が少なかったことや、僧侶が2人いたことで、急遽、感想のシェアを行うことに)、体験会は終了しました。
地獄体験をしたことで、なんというか、「自分」「人生」「罪」「生きる」「縁」といった事に思いをはせる事になり、浮ついていた私の心も、気づいた時には落ち着いていました。

自分でも思ってもみなかった効果を生んだ「地獄VR」。皆さまもぜひ一度、体験してみてください。
「地獄」に堕ちることで「人生と向き合う」ことができるかもしれませんよ。

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