死は突然やってきます。いつ、自分の家族や近しい人の身に降りかかってくるかわかりません。
人が亡くなったとき、考えなければならないことのひとつに「葬儀」のことがあります。
最近では「家族葬」や、お通夜を行わない「1日葬」、直接火葬場で行う「直葬」も増えておりますが、いずれにしても、必要な儀式のひとつです。

ここでは、いざという時にあわてないよう、亡くなってから葬儀までの流れを説明いたします。

葬儀・葬式を行う意味

葬儀は、故人をお弔いし、ご供養するための大事な儀式ですが、ほかにも多くの意味を持っています。

遺族の心の整理

家族や、近しい人が亡くなったときは、自分で思っている以上に、心に影響が出ているものです。その影響を「グリーフ」といいます。
実際にご遺体と対面して、お別れを告げることで、徐々に亡くなった事実を受け容れ、心が整理されてきます。
もちろん、亡くなった人が生前の姿でいられる最後の晩に行う「お通夜」や、「初七日」「四十九日」をはじめとする法要も、大事なグリーフケアになります。

遠くの親族や、知人たちとの交流

葬儀は、故人と縁のあった方が多く集まります。普段会うことのない遠くの親族や、故人の知り合いではあったものの、直接は知らなかった方などと挨拶することもあります。
そういった方々と、あらためて関係を深められるのも、葬儀の役割のひとつです。
それも、故人が繋いでくれた大事な縁なのです。

社会的な意味

故人の仕事関係や、知人友人に亡くなったことを知らせることも、大きな意味のひとつです。身内だけで葬儀を進めてしまうと、のちに、そういった方々がバラバラに弔問にみえ、かえって手間がかかってしまうこともあります。
また、死亡届などの行政手続きを、葬儀社の方が代行してくれる場合もあるので、確認してみましょう。



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亡くなってから葬儀までの流れ

亡くなってから葬儀までには、やらなければならないことがいくつかあります。
近しい人が亡くなってしまったときは、思っている以上に気が動転しているものです。
いつまでに葬儀をしなければならないという決まりはありませんが、ご遺体を保存する期間には限りがありますし、保管費用もかかってしまいますので、心を落ち着かせて、慎重に進めることが必要です。

危篤のとき

親族や親しい人が、最期に顔合わせできるよう、連絡を入れてください。「死に目に会うことができなかった」という心残りは、取り返すことができません。

亡くなったとき

病院で亡くなったときは、医師により「死亡診断書」が作成されます。それをもとに「死亡届」を作成し、役所に提出します。葬儀社が代行してくださると思うので、確認してください。
自宅で亡くなった際は、かかりつけ医や、救急に連絡してください。
すでに亡くなっていたのを発見した場合は、警察に連絡をして検死を受けなければならない可能性もあります。

家族へ連絡

医師に臨終を告げられたら、あらためて家族や親族に連絡してください。
危篤の連絡を入れていた方は、特に容体を心配していると思いますので、真夜中であっても、何らかの形で連絡を入れた方がよいでしょう。

ご遺体の搬送

病院に霊安室がある場合もありますが、多くの霊安室はあくまで一時的なもので、長時間の安置はできません。
そのため、速やかに葬儀社にお願いをして、「自宅」か、葬儀を行う「葬祭場」など、ゆっくり安置できる場所に搬送しなければなりません。
葬儀社は病院が紹介してくれますが、ご自身で選んだ方が後悔が少ないでしょう。どうしても急がなければならない場合は、搬送だけをお願いすることもできます。
余裕があれば、見積などを参照して、希望の葬儀ができそうな葬儀社に依頼するようにしましょう。

葬儀社との打ち合わせ

ご遺体の安置が済んだら、葬儀社との打ち合わせに入ります。葬儀の日程、お通夜を行うかどうか、祭壇の飾り方、香典返しや遺影選びなど、多岐に渡る決断が必要ですので、きちんと睡眠をとって、できるだけ判断力のある状態で打ち合わせしてください。
特に、費用のかかる部分については、相談できる人がいれば、一緒に打ち合わせすることをお勧めします。
日程を決める際は、参列者の予定もそうですが、必ずお坊さんの都合を聞いてから決定してください。

お坊さんとの打ち合わせ

菩提寺(先祖代々のお墓のあるお寺)のある方は、お寺に直接連絡を入れてください。葬儀の日程の話もそうですが、戒名を授かるにあたり、故人の好きだったことや、打ち込んでいたことなどをお話することで、故人にふさわしい戒名をつけてくださると思います。
お坊さんとの付き合いがない方は、葬儀社から紹介していただくか、インターネットでお坊さん紹介サービスを探すこともできます。
長い付き合いになる可能性もあります。どの宗派のお坊さんにお願いするか、どんなお坊さんがいいか、きちんと選ぶことが重要です。



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葬儀日程の決め方

亡くなってから24時間以内の火葬は、法律で禁じられているため、最短は亡くなった翌日の葬儀ということになります。
ですが、それだと慌ただしすぎるため、亡くなった日の翌日のお通夜、さらにその翌日に葬儀、火葬とする場合が最も多いやり方です。
しかし、先述した通り、お坊さんや参列者の都合なども考えると、難しい場合も出てきます。
また、火葬場の空きも考慮する必要があります。友引や年末年始、お盆などは火葬場自体が休みの場合もありますので、注意してください。
会社勤めをしている方は、忌引きが何日とれるのかも考慮する必要があるでしょう。
また、何より、ご自身の心の整理がついているかどうか。
きちんと相談して、各方面の都合をとりまとめてから、よく考えて日程を決めてください。

葬儀を進める前にしておくべきこと

これまで、亡くなってから葬儀までの流れを説明してきました。
やることや決めなければならないことが多く、大変だという印象を持ったのではないでしょうか。
亡くなる前に葬儀の準備をすることに抵抗を覚える方も多いでしょうが、大切な家族との限られた時間を有意義に過ごすためにも、必要なことです。
事前に決めておきたいことや、確認しておきたいことをまとめておきますので、ぜひ参考にしてください。

菩提寺の有無を確認する

菩提寺(先祖代々のお墓があるお寺)がある場合、そのお寺のご住職に、葬儀の読経をお願いする必要があります。もちろん、亡くなってから連絡しても対応していただけると思いますが、事前に心配ごとなどを相談しておくと安心でしょう。
特に、聞きづらいかもしれませんが、お布施や戒名を授かる場合の費用の目安なども、聞いておくとよいでしょう。たいていのお寺なら目安を教えてくださると思います。

葬儀会社を決めておく

先述の通り、病院で亡くなったときには、速やかに霊安室から遺体を搬送する必要があります。
葬儀社を決めておかないと、その場の流れで、そのときに搬送してくれた業者にお願いすることになりがちです。その会社が良心的ならよいですが、そうではない場合も多くあります。
よい葬儀社は、予算の見積はもちろん、どのような葬儀にしたいのか。祭壇の飾りや、香典返しや、遺影をどうするかなど、様々な相談に乗ってくださいます。
余裕があれば、複数の会社から見積をとり、比較検討してみてください。

参列者をリストアップしておく

近年は、家族葬といって、ごく身内の親族のみで行う場合も多くなりましたが、それでも、どのくらいの親族まで呼ぶべきか、時間のあるうちに考えておくことは重要です。
ご本人がまだ元気なうちに、希望を聞いておくことも大事なことです。

まとまった現金を用意しておく

故人の預貯金は、死亡届を出すと凍結され、相続の手続きをしないと引き出せなくなります。
葬儀にかかる費用は、思っている以上にかさんでしまいます。
「お坊さんへのお布施」「式場使用料」「火葬代」「葬儀社への費用」「通夜ぶるまいや精進落としなどの飲食代」などなど、合計で100万~200万円くらいかかってしまうことも珍しくありません。
また、病院の精算も、早めに必要になる可能性もあります。
必要があれば、ご本人とも相談のうえ、先に現金を引き出しておくと安心です。



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まとめ

「葬儀」は生涯に何度も行うものではないため、「葬儀の喪主」という立場に慣れている人はいません。
身近な人の死の影響を受け、正常な判断ができないまま、後悔の多い葬儀になってしまう方もいらっしゃいます。
故人や、残された遺族、参列してくださった方々が満足できる式になるように、事前にできることは行っておきたいものです。

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