色褪せた写真の復元・再生加工のプロフェッショナル 東京印書館。
色褪せてしまった大切な写真が鮮やかに蘇るのはもちろん、人の記憶と共に人の縁を繋いでいく。
今回はそんな東京印書館の写真再生を実例と共に、浄土宗僧侶 佐山師が話を聞いた。

「株式会社東京印書館」とは

東京印書館は、1947年の創業から70年以上、「写真の品質」「色調」「質感」にこだわり、様々な印刷物を作り続けてきた老舗の印刷会社です。
年間に100冊以上の写真集を手掛けるなど、「写真の再現」に自信をもつ東京印書館が、今、力を入れている取り組みがあります。
それが、色褪せてしまった写真に、色を戻す「デジタルリマスター」です。
〈詳しくは過去記事を参照ください〉
https://coco-yori.com/News/view/cocoyori/115

「デジタルリマスター」を始めたきっかけ

サービス担当の下中氏は、こう語ります。
「長年にわたり写真家さんのお撮りになったデータを、どうやって印刷で再現するか、という点を追求しながら写真集の制作をお手伝いしてきましたが、ここ1年くらい、その技術を『広く一般のお客様にご活用頂けないだろうか』と思うようになったのです」

「色褪せてしまった古い写真の修復や、モノクロの写真のカラー化という技術を、当初『遺影』の作成に役立てていただけると考えていたのですが、遺影は非常に短い納期対応が
求められるため、専門業者ではない弊社では対応が難しいものがありました」

「実際には、古い写真を鮮やかによみがえらせることで、祖父母や両親への『贈り物』にしたいという理由でご相談を頂くことが多いことに気付き始めました」
「昔撮影した写真がよみがえり、お客様に大変喜んで頂けたことで、これは『続ける価値がある』と思ったのです」
東京印書館の「デジタルリマスター」は、写真をよみがえらせる技術。
ですが、それは同時に、人の記憶をよみがえらせる技術でもあるのです。

「デジタルリマスター」で気をつけていること

「色をそのまま再現する、というよりも、お客様の記憶や思い出の中にある『鮮やかさ』について丁寧にお話をお聞きすること、きちんとした時代考証から、色を推察することを重要視しています」と、技術部門の片山氏は語ります。
「例えば、戦時中の写真である場合には、物資不足などから、逆に派手すぎないようにした方が喜ばれる場合もありますし、中にはあえて『モノトーンでお願いします』という方もいらっしゃいます。『フルカラーだと、思い出の中の色が壊れてしまう』と」

モノクロ写真でも、作品として成立させる深みを持たせられるのが、東京印書館の強み。
仕上がりには「画像としての完成度」が求められ、作業者には「美術的センス」が必要になってきます。
「単なる塗り絵ではありませんので、お客様にヒアリングして、いかに『理想色』『記憶色』に近づけられるか、たくさんの写真集を作ってきた経験を活かせるように努力しています」

お客様からも、たくさんの感謝の声がありました。
「『本当にキレイにしてくれて、ありがとうございます』『当時の思い出がよみがえってきます』といったお声をいただいています」
「家族全員で、『この服は何色だった』とか、『天気はこうだった』など、コミュニケーションをとりながら、昔を懐かしく思い出しました、という方もいらっしゃいました」

画像加工ソフトの能力が上がっている現在では、AIを使った自動彩色でも、かなりの再現度で色付けすることができます。
ですが、東京印書館の「デジタルリマスター」は、お客様との直接のコミュニケーションを重視することで、AIにはできないこと、お客様の心の中にあるイメージに寄り添い、近づけることを大切にしているのです。

リマスター事例

昭和13年に撮影された家族写真のフルカラー化

約80年前に撮影され、経年劣化により黄変したモノクロ写真をフルカラーで復元した。
写真の裏に書かれているメモを頼りに、当時の季節感や流行などを考慮し、着物や制服、軍服の色や背景の緑を再現。皺やキズ、破れも丁寧に修復している。

戦時中に撮影された六切りの風景写真を色鮮やかに復元

昭和20年、終戦間近に疎開先の山梨県で撮影されたというプリント。田植えの季節に相応しい新緑とうららかな光感、そして富士山の立体感が強調されるように復元した。

色褪せた若かりし頃の記念写真を美しく復元

約50年前に同僚と出かけた旅行先で撮影された記念写真を色鮮やかに復元。
撮影当時の抜けるような青空と、人物の生き生きとした表情が明るく引き立つように調整を行っている。

50年前の色褪せた愛車の写真の色を復元

この車は1972年に発売された幻の名車と呼ばれている「マツダ・サバンナRX-3」。
元々の色が全く判別できない状態だった為、依頼者の記憶を頼りに、当時のカタログなど限られた資料を参考に情報収集を行った。
車体の色はオリジナルに忠実に再現しつつ、土の色や背景の雪景色が不自然にならないように、まるでその場にいるかのような実体感と空気感を出すように調整を行った。

今後の「デジタルリマスター」

「お子様世代からの『贈り物』という部分を含めて、ご高齢の世代の方の『終活』にも役立てていただけないか、と考えています」と下中氏。
「自治体などから『昔の駅周辺の写真を復刻して欲しい』という相談もありました」

昔の記憶は、それを語れる人がいなくなってしまうと、そのまま忘れ去られてしまうかもしれません。
昔のことを覚えている人がいるうちに、「この辺りはどんな感じだったの?」と聞きながら、記憶を紡いでいくことで、人の縁は繋がっていきます。

東京印書館の「デジタルリマスター」は、世代を超えたコミュニケーションから、新たな縁を生み出す「心の技術」なのです。

東京印書館

古い写真の整理・デジタル化、思い出をいつまでも美しく
色褪せてしまった古い写真を鮮やかに
経年による損傷のあるプリントを完全修復
モノクロ写真の自然なカラー加工

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