「お盆」は特殊な行事

「お盆」は、日本人にとって大事な行事です。「亡くなった方が、以前暮らしていた家に帰ってくる」と信じられている行事なんて、きっと世界でも珍しいのではないでしょうか。

お坊さんにとっても、お盆は大切な行事です。先祖供養をする「盂蘭盆会法要」はもちろん、ご自宅まで伺って読経する「棚経」。地域によっては「施餓鬼」を一緒に勤めることもあります。

今回は、お坊さんたちの「お盆の思い出」を集めてみました。

「お坊さんって大事やな」
浄土宗 河村英昌

私が、お坊さんって大事やな、と思った時のお話。
あるお檀家さんの家に行ったとき、そこのお檀家さんは、ちょうど初めてのお盆の時期でした。
私はその年、成満してから初のお盆で、緊張たくさんで参っていました。
帰り際、ひとりの方に呼び止められました。
私は「何かミスをしたのかな…」と心臓バクバクでした。
その方は仰いました。「あんな。私にはもう、お寺さんしかあらへんねん。本当に今日は、来てくれてありがとうな」と、その場で泣いておられました。
私は、その言葉を聞いて「お坊さんになってよかったな」と、今までで一番強く思いました。
今でも、その時の表情、空間は胸に残っています。

「お盆法要」
浄土宗 雫有希

私の初めてのお盆法要は、あまり緊張していなかった記憶があります。
私は、プロレスラーとして、多いときは何千人のお客様の前で試合をしていましたから、勝負度胸はあったのかもしれません。
プロレスの試合では、「もし技を失敗した場合、慌てて立ちすくむのではなく、すぐに立ち上がり、殴るなり蹴るなりして、自分のペースを立て直しなさい」「立ちすくんで止まるのが一番ダメだ」と言われてきました。
その経験を活かし、「失敗したら、落ち着いて南無阿弥陀仏と唱えれば問題ない」と、妙な自信で開き直り、棚経を行った記憶があります。
プロレスも、技を完璧に出すのもいいことですが、何より、一生懸命な姿を見せることで感動を呼ぶスポーツです。
お経も、間違えないのに越したことはありません。
しかし、ありきたりではありますが、一番大切なことは「心を込めてやること」なんだな、と思った夏でした。

「僕のじいちゃんの乗り物」
曹洞宗 折橋大貴

精霊馬というものがございます。
キュウリとナスを、それぞれ馬と牛に見立て、行きは駆け足、帰りはゆっくりお帰りください、という意味のお盆飾りです。
とある大家族の前で、このいわれをお話した翌年、一番末っ子の男の子が、私の真後ろに、ピンと背筋を伸ばして座られました。
利発な子だな、と思いつつ、勤めようとしたその時に感じた違和感。
精霊馬が飾られている仏壇の、やや中央に置かれた、トミカのワーゲンバス。
「だって、僕のおじいちゃん、お馬乗れないもん」
なるほど、正しい!
馬から車へ、我々の頃には電気自動車か空飛ぶ車か。時代の流れと共に、価値観も文明も変化する。
これは誰のための準備なのか、ふさわしい用意はなんなのか。それを思い返す、大切な一日になりました。

「棚経の思い出」
浄土宗 佐山拓郎

学生の頃、祖父から「棚経を手伝え」と言われ、弟とふたりで、近所の檀家をまわりました。
十数件をまわりきり、やれやれと実家へ戻ると、別ルート担当の弟が戻っていません。
迷子かな、と探しに行くと、ルートの最後のお宅で、泥酔状態の弟を発見しました。
真っ赤な顔で「酒の誘いを断るとバチがあたるって、じいちゃんが言ってたから…」という弟の頭をはたき、連れ帰りました。
今思うと、檀家さんも、小さな頃から知っている菩提寺のお坊ちゃんにビールを御馳走できることが、嬉しかったのかもしれません。

お坊さんたちの「お盆の思い出」いかがでしたでしょうか。
今の自分があるのは、ご先祖さまから「いのち」が繋がってきたからです。
お盆を機会に、ぜひお墓まいりして、感謝を表してみてください。

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