知っているようで知らないお盆のこと、お伝えいたします。

皆様、はじめまして。浅草にある緑泉寺の住職、青江覚峰と申します。

第一回の今日は、ちょうどこの時期ですからお盆のお話をしましょう。
※全国的には8月ですが、東京では7月の中旬にお盆があります。

◆お盆とは

お盆という呼び方は「盂蘭盆経」というお経の中で書かれているストーリーからきています。

あるとき、お釈迦様の弟子である目連(モッガラーナ)が、亡くなったお母さんが餓鬼道に堕ちて苦しんでいるのを見つけてしまいます。

そこでお釈迦さまに相談をしたところ、7月15日に行われる「雨期の安居(勉強会)」を終えた後、修行していた僧侶たちに飲食物の供養をするようにいわれます。

目連尊者は言われたとおりに供養を行ったところ、無事に母親を救うことができたという物語です。

そういうわけで、多くのお寺ではお盆の期間中に施餓鬼(せがき)という、餓鬼道に堕ちた衆生を供養する法要を行います。

一般的にはお盆といえば「ご先祖さまの里帰り」というイメージのほうが強いですよね。
これは古来から日本に伝わる、御魂祭(みたままつり)という民間信仰に由来するそうです。あの世から帰ってくるご先祖様を丁重にお祀りし日々の加護と子孫繁栄を願うのです。
インドで生まれた仏教と日本古来の祭り事が融和したもの。これが現代のお盆のかたちなんです。

さて、このお盆、地域や宗派によってお迎えの仕方は様々です。

◆お盆の時期

お盆休みというほどですから、もっともメジャーなのは8月のお盆でしょう。しかし東京では7月のお盆も一般的です。さらに、例えばうちのお寺の支坊(会社で言うところの支社)のある西東京では7月末をお盆とする田無盆というものもあります。

お盆の時期が異なる理由は色々と言われていますが、その地域で比較的人が集まりやすい時期とされているようです。

明治になり、新しい暦が取り入れられたときに暦の上で7月の15日をお盆とする都市部に対し、それだと農業の繁忙期に重なってしまう農村地では、きちんとお盆を迎えることができないという不便がありました。そこで月遅れのお盆を8月に迎えることとなったのだとか。現在でも8月をお盆とする地域が多いのはこのためです。
先に紹介した7月末の田無盆は、田無の主要産業であった養蚕の手が一段落する時期にお盆を迎えるようにしたと言われています。農業といっても、栽培するものによって繁忙期が異なりますから、その土地土地で皆がやりやすい時期をお盆にしたのですね。

◆お盆の迎え方

お盆の迎え方も地域や宗派によって様々ですが、有名なところをいくつか紹介いたします。

・盆棚
ゴザの上にお位牌やお花をお供えし、きゅうりで作ったウマやナスで作った牛を飾る盆棚

・盆提灯
盆提灯はお盆のとき、先祖や故人の霊が迷わず帰ってくる目印として飾ります。浄土真宗では盆提灯のかわりに切子灯籠(きりことうろう)を用います。

・迎え火
お盆で行われる「迎え火」や「送り火」も地域によってやり方が異なります。
一般的には「迎え」は13日のお盆の入りの日に迎え火を行いますが、提灯を持ってお寺にお参りして火をもらい、その火を家の仏壇まで持ち帰ってお盆の間絶やさずに火を灯し、明けの日に送り火として火を消すというもの(この場合お寺からご先祖様=火を家に連れて帰るという発想)や、家の前で小さな焚き火をして、ご先祖様がその日を目印に仏壇にやってくるというものなど様々です。いずれも、基本的にご先祖様が家の仏壇までたどり着くことを目的としたもの。送り火は盆棚に飾った馬や牛を火にくべ、煙とともにご先祖様が帰っていくと考えられています。

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