神様の神殿の奥に「精神と時の部屋」という不思議な場所があります。

部屋の中であるにも関わらず地球と同じくらいの広さがあり、
その部屋の1日は地球を流れる時間の1年分に匹敵します。

つまり、そこでのたった1日の修行は通常で行う1年分の修行に当たるというわけです。
このような理由から、悟空やベジータたちはこの部屋を大変重宝に利用していました。

「精神と時の部屋」は寒暖の差が大きく、また空気も薄く、
さらに何倍もの重力がかかっているという過酷な環境で、
少年の頃の悟空は1か月過ごすのがやっとでした。

ここには食事や風呂などがある小さなスペース以外は何もなく、
ただ真っ白な空間が広がっています。
普通の人間ならば、到底まともに過ごせるような場所ではありません。

これに対して浄土宗で読む「阿弥陀経」というお経の中では、
「極楽」とは金銀の宝石であふれ、良い香りの中で美しい鳥がさえずり、
大きな蓮の花が咲いており、色とりどりに光っている、と描写されています。

そこでは、人々は美しい着物を着て苦しみを感じず、
ゆったり歩いているとも書かれていますから、
「精神と時の部屋」とは正反対だと感じるかもしれません。

ですが、「阿弥陀経」は阿弥陀仏が創られた「極楽」という世界をお釈迦さまが私たちに説明するためにわかりやすく表現された経典です。

つまりこれは、美しく良い香りがする空間が好きな人が多いであろうと思い、
比喩として表現した文章であるわけで、
当然すべての人に当てはまる「極楽」ではないのです。

「本に囲まれたい」という人もいるでしょうし、「土を耕していたい」「釣りやスポーツをしていたい」という人もいるでしょう。

人の数だけ、極楽の形があるのです。

セルを倒すため、短期間でかなりのパワーアップを求められていた悟空やベジータにとって、
「精神と時の部屋」はうってつけの場所でした。

何もない空間に過酷な状況だけがあるわけですから、
ただひたすら「強くなりたい」という思いだけをもって修行に集中することができるのです。

現に悟空や息子の悟飯はそこでスーパーサイヤ人の壁を超え、
ベジータやトランクスもかなりのパワーアップを果たしました。
 
悟空はのちに「あそこの中はそうとうカラダにきつい」 という理由で部屋から出て身体を休めるのですが、
これはお釈迦さまが苦行をやめて瞑想に入ったことを彷彿させるエピソードです。

要するに悟空は、お釈迦さまが得た真理のひとつ「中道」を実践していたのです。
それでも、あの瞬間、お釈迦さまに苦行が必要だったように、
悟空にも「精神と時の部屋」が必要だったのです。

なぜなら純粋に自身のパワーが上がっただけではなく、
息子である悟飯がセルに匹敵する潜在能力を持っていることに気がつくことができ、
結果としてその悟飯がセルを倒したのですからーー。

「極楽」は人の数だけあり、さらにその時々により変わっていきます。

それと同様に、どんな空間に安らぎをおぼえるかというのもその時々で変わっていくものなのです。

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著者紹介

鶯 蒼治郎
謎の浄土宗僧侶。
その正体は闇に包まれているが、以前は目黒で活動していたS山T郎ではないかとも言われている。
《著書》
三笠書房・知的生きかた文庫より『流されない練習』発売中
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西念寺ホームページ:http://sainenji.tokyo/