「運がいい」という言葉を聞くことがあります。

どこか「何もしていなくても、いいことが降ってくる」というニュアンスがにじみ出ている言葉ですが、
「すべての出来事には原因があり、それによって物事が起こる」と考える仏教では、
「運」は「今まで積み上げてきた、縁」によるととらえます。

良い運も悪い運も、自分の行動によって生まれるのです。

「縁」は、亡くなった人とも繋がっています。

そのため、人は「法事」や「墓参り」という「供養」をします。

「供養」は、「しなければならないもの」ではなく、
自分のために「させていただくもの」です。

自分自身が、亡くなった人との縁に感謝し、
「有難い」という思いを感じることにより、
前向きに過ごすことができます。

そういう人のもとに、良縁は訪れるのです。

以前
「ドラクエとお弔い」
で書いたように、
ドラクエ11では、主人公の祖父である「ロウ」が、
亡くなった娘と婿のために、
葬儀のようなお弔いをしています。

亡くなった人は「命の大樹」に還り、
いつかまた大樹の葉として生まれてくるという、
ドラクエ11の宗教観の中で、
「自分と孫で儀式を行って、亡くなったふたりを大樹へ送ってやりたい」
という思いを叶えたことで、前向きな気持ちになり、
主人公とロウの絆は深まりました。

ドラクエ11の宗教観は、
仏教の「仏さまの導きで、縁が巡る」という考えかたとよく似ています。

現在のコロナ禍の中、
人々の不安は日に日に増しています。

自粛や規制の連続により心が疲弊してしまった方も多いことでしょう。

そんなときは、同じくドラクエ11で、
シルビアが行っていた「世助けパレード」を思い出して欲しいのです。

魔王ウルノーガにより命の大樹が地に堕ち、
人々が希望を失っていたとき、旅芸人であるシルビアは「世助けパレード」と称し、
仲間を連れて各地をまわっていました。

大きな敵の前では、どうしても自分に無力さを感じ、やる気を失ってしまいます。

ですがシルビアは、自分や仲間がずっと笑顔でいることが、
いつか世界のためになると信じ、小さくてもできることから始めたのです。

元々「騎士道」の精神を持っており、
そこに「芸人魂」を加えたシルビアは、そうやって縁が繋がっていくことが、
いつか良縁となると、身をもって知っていたのではないでしょうか。

困っている人を助けるのが「騎士道」。

シルビアの父・ジエーゴも、
再び旅立つシルビアが連れていけなかった仲間を、快く引き受けました。

シルビアは「自分にしかできない騎士道がある」と言っていました。

その道は、この世の全員にあります。

このコロナ禍で大事なのは、まずは自分がかからないこと。

その意識が広がっていけば、感染拡大は、防げるはずです。

まずは自分から、「自分にしかできない道」を見つけ、
それを地道に行っていくこと。

そうやっているうちに、いつかそれが、
自分のまわりから、世界へ広がっていきます。

強大な敵の前でも、自分は「無力」ではない。

シルビアの騎士道は、それを教えてくれました。

写真協力
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著者紹介

鶯 蒼治郎
謎の浄土宗僧侶。
その正体は闇に包まれているが、以前は目黒で活動していたS山T郎ではないかとも言われている。
《著書》
三笠書房・知的生きかた文庫より『流されない練習』発売中
《関連情報》
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西念寺ホームページ:http://sainenji.tokyo/