先日、ニュース番組でこんな映像を見ました。
トルコでの話。
ワンちゃんの散歩中に、ご主人の体調が悪くなり、
ストレッチャーで救急車に運ばれる事になってしまいました。
ワンちゃんは、その姿を見つめながら、
おもむろに自分も救急車に乗ろうとするのですが、
さすがに隊員に止められてしまいます。
心配そうに外から見つめるワンちゃん。
ついに救急車が出発します。その時。
なんと、ご主人が乗った救急車を、
ワンちゃんが走って追いかけはじめたのです!
救急車が病院に到着し、
治療のあいだも、ワンちゃんはずっと病院の外で待ち続けました。
そして治療が終わり、ご主人が出てきたときには、
思いきりシッポを振りながら迎えたのです。
なんと健気なワンちゃんでしょう。
この映像を見たとき、ドラクエ6のある場面を思い出しました。
空飛ぶベッドが手に入る「クリアベール」という街。
ドラクエ6では、
夢の世界と現実の世界を行き来しながらストーリーを進めていくのですが、
夢の世界の方のクリアベールで、
熱心にお墓の前でお参りしている人がいます。
話しかけると、
「ここには、ボクの大切なご主人さまが、眠っているんです」と言って、
またお参りに戻ります。
少しストーリーが進み、今度は現実の世界のクリアベールに行くと、
同じ場所にあるお墓の前にいるのは、
なんとワンちゃんなのです。
つまり、夢の世界のクリアベールにいる人は、
ワンちゃんの見ている夢だったのです。
ワンちゃんのご主人である「ジョン」は、
ずっと病気をしていて、
ベッドから出られない生活をしていました。
きっとワンちゃんは、ジョンの話し相手になりたくて、
「自分も人間だったら…」と思い続けていたのではないでしょうか。
それがきっと、夢の世界での人間の姿に繋がったのです。
初めてこのシーンを見たときには、
モニターの前で嗚咽がもれるのではないかと思ったくらい感動したものです。
ドラクエには、
他にもお弔いのシーンが出てきます。
ドラクエ11のロウは、
自分の孫である主人公と再会したときに、
魔物に襲われて死んでしまった娘と婿(つまり主人公の両親)を、
ふたりきりで弔います。
人は死んだら「命の大樹」へ帰り、
そしてまた、
再び大樹の葉として生まれてくる。
この宗教観の中、
どうしても、
孫と一緒に葬送の儀礼を行いたかったのでしょう。
ロウの気持ちは、
とてもよくわかります。
弔う心の中で大切なのが、
「感謝」の気持ちです。
人は、両親から生まれ、
他にも様々な縁の繋がりによって、
生かされています。
私たちは、その縁に感謝しながら生きていかなければなりません。
そして、縁は亡くなった人とも繋がっています。
クリアベールのワンちゃんも、
亡くなってしまったジョンとの繋がりの中で、
自分の存在の意義を作り出していますし、
ドラクエ11のロウや主人公も、
亡くなってしまったユグノア王や王妃との縁があり、
再会を果たしたのです。
先に亡くなった縁者への感謝を表すことで、
お弔いの心は一段深まります。
今の自分がいるのは、
今の横の繋がりももちろんですが、
たくさんの先人たちとの繋がりがあっての事なのです。
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著者紹介
鶯 蒼治郎
謎の浄土宗僧侶。
その正体は闇に包まれているが、以前は目黒で活動していたS山T郎ではないかとも言われている。
《著書》
三笠書房・知的生きかた文庫より『流されない練習』発売中
《関連情報》
根岸・西念寺にて「ドラクエ法話」不定期開催
西念寺ホームページ:http://sainenji.tokyo/
立正大学仏教学部卒業。東京仏教学院卒業。浄土真宗本願寺派僧侶。
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