師匠から弟子へ技や心を伝える「共生」については
「師から弟子への「共生」 ドラゴンボール法話#4」でお話しました。

また「強さへの欲は、執着ではない ドラゴンボール法話#3」でお話しした通り、世の中は縁で成り立っております。

亀仙人と悟空の出会いも、ドラゴンボールを探す旅の中での大きな縁といえるものです。

悟空はその後、カリン様や神様、そして界王さまなど多くの師に教えを仰ぎ、
独自に力を伸ばしていきますが、最後まで亀仙流の道着を着続けています。
そこにはおそらく、武術の基礎を教得てくれた師に対する尊敬の念が表れているのでしょう。

このように、「思い」を引き継いでいくのもまたひとつの「共生」であるといえます。

今、私たちが仏教を学ぶことができているのは、
2500年前にお釈迦さまが悟った真理を語り継いできてくださった先人たちがいたからです。

まだ紙もない時代から、デジタルが当たり前になった令和のこの時代まで様々な方法で伝わってきた奇跡の「共生」です。

武道をはじめ多くのことでいえることですが、
仏教もまた「この素晴らしい教えを後世に遺したい」という当時の人々の思いを、
それぞれの時代、そしてそれぞれの国で受け取り、
また次代へ繋げようとしてきたからこそ生き続けているものなのです。
悟空がナッパに「ピッコロのうらみ」「天津飯のうらみ」(ジャンプコミックス巻十九 p130、131)などを一撃ずつ返していくシーンがありますが、
あれはまさに「地球の危機のために立ち上がった仲間たちからの思い」を悟空が受け取ったことによる思いの連鎖といえるもの。

だからこそ、あそこまで読者の心に刺さる重みのある反撃となったのでしょう。

また、ナメック星でフリーザと戦うときに悟空はフリーザにやられて瀕死のベジータから
「た…たのむ… フリーザを…フリーザをたおしてくれ……」
「た…のむ」
「サ…サイヤ人の…手……で……」(ジャンプコミックス巻二十六 p105)と頼まれます。

ベジータはこの言葉を言い残して死んでいきますが「フリーザにいいようにされてしまい、
切り裂かれた『サイヤ人の誇り』のために戦ってほしい」というベジータの切なる願いを受けたからこそ、
悟空の勝利に繋がったのだと思うのです。
その後ベジータは地球でトランクスという子を持ちますが、
最初に来た未来のトランクスは、物心つく前に父を亡くしていました。

そのためか、未来のトランクスはセルとの戦いの際に若干の不器用さを見せ、
パワーに頼った進化を果たし、結果としてセルに降伏することになってしまいます。

真偽のほどはわかりませんが、
これは「戦いの天才」とまで言われた父親と触れ合う時間が少なかったためなのかもしれません。

ただ、ここ以外のどこかには救われた世界があっても良いのではないかという未来のブルマの思いを受けとって現在の危機を救いに来たトランクスの正義感はきっと未来の師匠だった孫悟飯譲りなのでしょうし、

過去に戻った結果として自分たちの世界の人造人間やセルも倒せる実力を身に着けることになったのですから、結果的にトランクスの努力は報われたといえるでしょう。
このようにドラゴンボールでは、未来やパラレルワールドとの共生も表現されているのです。

現代のトランクスは父からの愛を存分に受け、さらに強くなっていくのではないでしょうか。

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著者紹介

鶯 蒼治郎
謎の浄土宗僧侶。
その正体は闇に包まれているが、以前は目黒で活動していたS山T郎ではないかとも言われている。
《著書》
三笠書房・知的生きかた文庫より『流されない練習』発売中
《関連情報》
根岸・西念寺にて「ドラクエ法話」不定期開催
西念寺ホームページ:http://sainenji.tokyo/