北海道の片隅にある小さなお寺・仁玄寺(にんげんじ)には、
誰かにとっての大切な1冊ばかりを集めた本棚があります。
「あなたの『とっておきの1冊』は、どんな本ですか?」
そんな問いから始まる、本と人生とを巡るインタビュー、お楽しみください。
『ちょっとだけ』福音館書店、2007年
著者:瀧村 有子(さく)、鈴木 永子(え)
お勧めしてくれたのは、私の大学時代からのお友達である、ゆりあさんです。
(※詳しいプロフィールは文末をご覧ください)
「頑張る子どもあるある」がいっぱいの絵本
赤ちゃんが生まれて、お姉ちゃんになった「なっちゃん」が、赤ちゃんのお世話で忙しいお母さんを見ながら、自分のことを自分でしようと、ちょっとだけ頑張ってやみる。でも最後は…というお話の絵本です。
絵も文も、子どもの特徴を捉えていて、子どもが洗面台の鏡を見るために、踏み台にするために椅子を運んで来るとか、自分で髪を結ぶと、ちょっと毛が飛び出ちゃう感じとか「あるよねー」と思います。だから、うちの子どもとしては、なっちゃんが牛乳を注いだり、髪を結べたりという場面に自分を重ねているようでした。「なっちゃん、頑張ってるね」「私もできるし~」という感じで。
子どもに頼まれてみ聞かせると、親の方が泣いてしまう本
ただ、親としては、なっちゃんの頑張りが切ないんです。「お母さんが忙しいのも分かっているし、でも寂しいな」みたいな気持ちで頑張っていて、でも最後、眠くなっちゃった時だけ、「ちょっとだけ抱っこしてちょうだい」ってお願いに行くシーンがあるんです。その時だけは、赤ちゃんに我慢してもらって、お母さんにいっぱい抱っこしてもらえるんです。
そこから、お母さんの「赤ちゃんもお姉ちゃんもどっちも大事なんだよ」っていう気持ちが伝わってくるのですが、もう、なっちゃんに上の子がめっちゃ重なって思えて……子どものリクエストで読み聞かせをすると、私の方が泣いてしまいます。
普段はどうしても時間に追われてしまい、子どもに怒ってしまいます。この本を読むと、「子どもも子どもなりに頑張っているんだな」と気付かされて、改めて「子どもの気持ちも大切にしなくちゃな」と思ったりします。
以前、テレビでつるの剛士さんがご紹介されていたのですが、つるのさんも、泣きながら読まれていて……「ああ、やっぱり、親に刺さる本なんだなぁ」と思いました。
こんな人におすすめ
2人目の子どもが生まれるお母さん、お父さんたち
とっておきのページ
pp.26-29「いっぱい だっこしたいんですけど いいですか?」「いいですよ!」
この本を紹介してくれたのは…
ゆりあさん
たまちゃんの大学時代の友人です。2歳差姉弟の育児に奮闘中です。料理は得意じゃないけれど、食べるのが好き。節約のためにお弁当作るのがいいとわかっているけれどランチは外食したり、コンビニの新商品を食べたりしたい派です。新作のフラペチーノを飲むのがストレス解消法(*´ω`*)
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高野山真言宗仁玄寺副住職。“大切な人と死別した子ども”を支える市民団体「グリーフサポートSaChi」の事務局員。宗派を超えた道内寺院関係者の集い「てらつな」運営にも注力。