マンガ大賞2021にて大賞を受賞した『葬送のフリーレン』という漫画があります。
週刊少年サンデーで昨年の2020年から始まった作品で、「アメトーーク!」の「マンガ大好き芸人」など、テレビで何度か紹介されたので、ご存じの方も多いのではないかと思います。
さらに先日、アニメの放送が開始され、再度注目を浴びている『葬送のフリーレン』。
ここより編集長が1巻を読み、レポートした記事を再掲載します!
『葬送のフリーレン』とは
第1話の扉絵にこう書かれている。
――――――――――――――――――――――――
魔王を倒した勇者一行の
“その後”──
英雄たちの “生き様”を物語る
後日譚(アフター)ファンタジー
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出典:山田鐘人/アベツカサ『葬送のフリーレン』
この作品はファンタジーでありながらも、1000年以上生きている魔法使い フリーレンの人間味を味合わせてくれる作品である。
ようやく1巻を読むことができたので、僧侶である私が感想を綴っていきたい。
フリーレンの涙の理由
フリーレンはエルフの女の子。
女の子といってもエルフなので、千年以上生きている。
魔法使いとして、人間である勇者の一行に加わり、魔王を倒した。
物語はそこから始まり、仲間であった勇者や僧侶は、その50年後に亡くなってしまう。
フリーレンにとって、仲間と冒険した10年も、その後の50年も、たった数日ほどの感覚しかない。
勇者であったヒンメルと再会するときも、すっかり老人の姿になっていたことに驚いていた。
魔王を倒した記念に作られた勇者パーティーの像も、すっかり汚れてしまっていた。
ヒンメルの葬儀のとき、最初は淡々と参列していたフリーレンだったが、別の参列者から、泣かないことを「薄情だ」と言われてしまう。
そこで初めて、フリーレンは涙を流す。
「…だって私、この人の事、何も知らないし…」
「たった10年、一緒に旅しただけだし…」
フリーレンにとっては数日ほどの感覚しかない「10年」という冒険の記憶が、出棺のたった一瞬の間に、よみがえってきた。
フリーレンには短い間でも、死んだ勇者ヒンメルや、ドワーフの戦士アイゼン、そして、葬儀の司式を務めた、僧侶のハイターたちにとっては、かけがえのない10年だったのだ。
ヒンメルと、もう今生で会うことはかなわないと自覚したフリーレンは、きっと千年生きてきて初めて、「別れが悲しい」と思った。
「…人間の寿命は短いってわかっていたのに…」
「…なんでもっと知ろうと思わなかったんだろう…」
フリーレンは、人間を知るための旅に出かける。
趣味である「魔法収集」のためだと言いながら、それはきっと、亡き勇者ヒンメルや、仲間たちのことをもっと知りたい、という気持ちから起こったものだったろう。
人間を知るための新たな旅の中で、魔法使いの弟子をとったフリーレン。
フェルンという名前のその女の子は人間であるため、フリーレンの感覚以上のスピードで成長していく。
そしてフリーレンは、フェルンの成長を通じて、人間についての理解を深めていく。
ヒンメルの葬儀の時に感じた気持ちが、どのようなものだったのか。フリーレンは、人間への理解と同時に、自分の気持ちにも気がついていく。
供養の心は「自分のため」
『葬送のフリーレン』は、勇者たちの冒険が終わってから始まる「後日譚ファンタジー」だと書いてあるが、1巻を読む限り、実はタイトルの通り、「供養」「弔い」「悼む」といった、人が、亡くなってしまった人に対して思う心について、掘り下げている作品である。
ある村を訪ねたフリーレンは、朽ちかけている勇者ヒンメルの像を、魔法でキレイにして欲しいという依頼を受ける。
その依頼自体はすぐに完了するのだが、まわりに花が欲しい、という話になる。
フリーレンは、そこに咲かせる花を、ヒンメルの故郷の花にしたい、と思った。それはまぎれもなく「供養」の心。
かつてヒンメルが、自分の魔法を褒めてくれて、故郷の花であしらった冠をかぶせてくれた記憶。
フリーレンは、その時のヒンメルの思いに報いたかったのだ。
フリーレンは、その供養の心を「きっと自分のためだ」と理解していた。
亡くなった人とも、縁は繋がっている
昨今、葬儀の簡略化が進み、亡くなった人へ思いを伝えることも、儀式的に淡々と進めてしまいがちになっている。
葬儀はもちろん、亡くなった人を浄土へお連れする儀式でもあるが、残された人たちの心の区切りでもある。
人は、葬儀を通じて、亡くなった人との縁の繋がりを感じる。
フリーレンは、ヒンメルの棺の前で流した涙をきっかけに、人を弔う心の大事さに気づいた。
フリーレンの新たな旅は、ヒンメルの供養のためであり、そして自分のためでもある。
人を思うことで、その思いはいつか自分に返ってくる。
ヒンメルがフリーレンの魔法を褒め、花冠をかぶせてあげた数十年後、自分の銅像に同じ花の冠をかぶせてもらったように。
『葬送のフリーレン』基本情報
『葬送のフリーレン』
原作/山田鐘人 作画/アベツカサ
↓マンガを読むならこちら↓
https://www.shogakukan.co.jp/books/09850180
〈 書籍の内容 〉
魔王を倒した勇者一行の後日譚ファンタジー
魔王を倒した勇者一行の“その後”。
魔法使いフリーレンはエルフであり、他の3人と違う部分があります。
彼女が”後”の世界で生きること、感じることとは--
残った者たちが紡ぐ、葬送と祈りとは--
物語は“冒険の終わり”から始まる。
英雄たちの“生き様”を物語る、後日譚(アフター)ファンタジー!
出典:小学館 | https://www.shogakukan.co.jp/books/09850180 |
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浄土宗僧侶。ここより編集長。大正大学卒業後、サラリーマン生活を経て、目黒の五百羅漢寺へ転職。2014年より第40世住職を務めていたが現在は退任。ジブリ原作者の父の影響で、サブカルと仏教を融合させた法話を執筆中。