一休寺オリジナル御朱印帳のご案内

再度、こちらここよりさまに寄稿させていただきます。酬恩庵副住職の田辺宗弘と申します。
よろしくお願いいたします。

前回、rethinkというテーマでお話をしました。
今回はクラウドファンディングのリターンの品である朱印帖について書きたいと思います。

現在、空前の御朱印ブームと言えます。
朱印帖に関する冊子、書籍は多く出版されまたご朱印を軸とした旅行ツアーなども企画され人気です。

正直なところ、私は数年で終わるものだと思っていましたが、それに反して未だに根強い人気です。
ブームを過ぎて本当に好きな人たちだけが残っているような感じも受けます。それは私たち仏教関係者にとってとても嬉しいことです。

朱印帖に好きなご朱印を集める、コレクションのようなイメージを持ちますが、本来ご朱印は納経帖とも言い、般若心経を写経したものをお寺に収めたさいにその証として授与されるものです。ただ私は本来こうであったからと今のご朱印ブームを揶揄しようとは思いません。
きっかけはどうであれ、お寺そして仏教に興味を持っていただくことは私たちにとってとてもありがたいことだからです。

ご朱印の真ん中に三法印が押されます。
そしてそちらにそのお寺のご本尊もしくは教えが書かれます。
最初はコレクションで集めていただけでも この仏様は何だろう?
なんでこのお寺はこのご本尊様なのだろう?
この教えはどのような教えだろうか?と調べ始めます。
仏教は間口が広くその奥はとても深いものです。
次第にその魅力に魅了されていく。そのようなものがご朱印ではないでしょうか。

当寺では寺名でもある 酬恩(しゅうおん)と善哉(ぜんざい)という二つの朱印を授与しています。
酬恩というのは今回のクラウドファンディングで修繕を計画している開山堂に祀られている大応国師に対しての一休禅師の思いでした。
荒廃していた妙勝寺を再興する際に開山堂を建て大応国師をまつりました。
そしてこの境内地に酬恩庵という塔頭を設けました。
それ以来、この酬恩という思いは代を超えてずっとこのお寺に流れ続けている教えとなっています。
また善哉は善きかなと師匠が弟子をほめる仏教用語です。
一休禅師が小豆を炊いた汁(今の善哉)にこの言葉を用いられたことがきっかけと言われています。
善きかな よくやった!相手を承認し認める 言葉です。

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さて、前置きが長くなりました。
今回、満を持して一休寺オリジナルのご朱印帖を制作しました。

前述したとおり昨今のご朱印ブーム。
巷にはありとあらゆるご朱印帖があふれています。
そのお寺の寺号を印したもの、襖絵などの画をしたもの、朱印帖らしからぬ可愛らしいもの、デザイン性の高いモダンなもの と実にいろいろです。

朱印帖はいわばそのお寺の顔と言えるものです。
一見した時、手に取った時、このお寺の朱印帖だなと思えるそのようなものが理想です。
私自身、朱印帖を預かりご朱印を書く際に拝見し驚かされるものがたくさんあります。

今回、ご朱印帖のデザインを作家の寺脇扶美さんにお願いしました。寺脇さんには今までお寺のパンフレットに使用している鳥観図などを書いていただいています。

元々、境内の鳥観図を書いていただける方を探していた時に知人からご紹介をいただきました。
その中で彼女の今までの作品を拝見しました。
過去の作品なのですが、ぶどうのような円がいくつか大きく描かれたものがあり、色彩とそのデザインにとても惹かれました。
※実際そのひとつを購入。自身のお金で初めて買った美術品でした。他にも霊園案内の挿絵や前回のクラウドファンディングによるライトアッププロジェクトで制作した冊子の挿絵を描いていただいています。

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今現在はエンボスによる線と日本画着彩を組み合わせたcrystalシリーズを制作されています。
crystalシリーズは、鉱物の写生→その図像から線を抽出→線をデジタル化する→凸版を作る→麻紙にエンボスする→日本画着彩という工程で描いた作品となっています。

〈crystalシリーズamethyst #05〉
岩絵具, 水干絵具, 胡粉, 麻紙 エンボス 100×100×10cm 2016
https://www.youtube.com/watch?v=QHVdPv1kibU&list=PLMdESpsxnHsFsym0i3A3tfavK_9ZDTX5x&index=5

以前、寺脇さんには お寺の喫茶で使用する 懐紙を依頼したことがありました。
こちらもくもくじという白い粉糖にまぶされた長方形上のお菓子の為の懐紙です。
このお菓子はブールドネージュが元になっています。
この白いお菓子が映える懐紙ということで制作されたのが ユニット27 によるこちらの懐紙です。
うす暗い闇にかかる円相、月をイメージし和紙に銀箔をあしらっています。

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今回も銀箔を使用した 朱印帖となります。

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デザインは一休禅師の「有漏路(うろじ)より無漏路(むろじ)に帰る一休み雨降らば降れ風吹かば吹けに着想を得て制作されました。
この詩は一休の号の由来になったものです。
有漏路(うろじ)とは煩悩の世界そして無漏路(むろじ)とはそれとは反対の悟りの世界を表します。
どちらかが良いという二元論にとらわれず行ったり来たり、そこで一休みをしている。
来るものは拒まず、あるがままに受け入れる なんと一休禅師らしい詩です。

以下、寺脇さんからのお言葉です。
一休さんの「有ろじより 無ろじへ帰る 一休み 雨ふらば降れ 風ふかば吹け」という歌に着想を得ました。
お話をいただいた時期はまさにコロナウィルスの流行で世間が騒然とし始めていました。そこで今こそ、この一休さんの歌が重要な時ではないかと思いました。
そしてこの先も何があるかわからない世の中、この歌の在り方にひとつの光が見出せる気がしています。

コロナ禍の今の状況、先行きが不透明で皆が不安を抱えています。世界的な気候変動、100年に一度の大災害は遠いものではなく日常に。経済も疲弊しています。このチタン屋根プロジェクトが今後の文化財維持のロールモデルとしてひとつのきっかけになることを心から願っています。

用した 朱印帖となります。

寺脇扶美 Fumi Terawaki
プロフィール

1980年愛知県生まれ。2007年金沢美術工芸大学大学院 美術工芸研究科絵画専攻日本画コース修了。ジュエリーテデザイナーとして勤務したのち、2011年より本格的に作家活動を開始。見ること・視点のシフトを考察し、日本画技法をベースとした平面作品を制作している。最近の活動に「シャル美術賞2020」入選、「sanwaconpany Art Award / Art in The House 2021」サンワカンパニー社長特別賞受賞、「清須市第10回はるひトリエンナーレ」佳作など。今年12月11日スタートのグループ展「現代美術のポジション 2021-2022」(名古屋市美術館、愛知)に出品する。

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