グリーフとは

喪失体験による、さまざまな身体的・心理的・社会的な反応のことを「グリーフ(grief)」と言い、日本語では主に「悲嘆」と訳されます。

代表的な反応としては次のようなものが挙げられます。

・大切な人を亡くしてから、まったくやる気が起きない。

・強い悲しみに襲われて涙が止まらない。

・いつ元気になれるのか分からず不安になる。

・心にぽっかりと穴が開いたような感覚になる。

・現実を受け止められず、前に進むことができない。

また、一般的に死別による喪失体験をグリーフと定義されることが多いですが、それ以外にも、その人にとって大切なものを喪失した体験によっても起こる反応です。

例えば、離別や子どもの自立、病気、怪我、災害により住む場所を失う、失職などがあげられます。

グリーフは病気ではありません。誰にでも起こりうる自然な反応です。



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グリーフとグリーフケア

大切な人や、モノを失ったことによる喪失感によって、心が支配されそうになるのに対し、その窮地をなんとかしようと努力を試みる自分。

心は揺れ動き、なんとも不安定な状態となります。

同時に身体的にも不愉快な反応・違和感を経験します。

これらを「グリーフ」と言い、このような状態にある人に、さりげなく寄り添い、援助することを「グリーフケア」と言います。

「グリーフケア」は、グリーフを経験する人々が、その痛みや感情に対処し、健康な方法で適応するのを支援するための方法やアプローチを指します。

グリーフケアは専門家によって提供されることもあれば、友人や家族、コミュニティのメンバーによって提供されることもあります。

さまざまなグリーフによる変化

こころの変化

・何も感じられない
・自分を責める
・急につらくなる
・あまり覚えていない
・故人の面影にとりつかれる
・自尊心の欠如
・怒りを感じる など

これらの感情は時間とともに変化し、波のようにやってきたり引いたりします。

身体の変化

・だるい
・眠れない
・食欲がない
・疲れやすい
・頭痛・嘔吐・消化不良
・持病が悪化する など

ストレスや不安、うつ症状、身体の不調、食欲の変化、睡眠の問題などが現れることがあります。

行動の変化

・誰にも会いたくない
・集中しづらい
・落ち着かない
・号泣
・故人の行動の模倣
・行動パターンの喪失
・故人との思い出の日(誕生日や命日など)が近づくと気持ちが落ち込む など

失った人やものへの思い出や連想が日常生活の中で浮かび上がり、集中力や判断力が低下することがあります。

子どもの変化

・すぐに泣く
・怒りっぽくなる
・反抗的になる
・からだの不調が見られる
・黙り込む
・食欲が減退
・トイレのトラブル
・引っ込む など

子供がグリーフ(悲嘆)を経験する際には、その影響は年齢や発達段階、個人の性格によって異なります。

グリーフとの付き合い方

グリーフと向き合い、付き合うことは個人個人異なります。
個々の状況や感情に応じて適切な方法を選ぶことが重要です。

感情を受け入れる

グリーフを感じることは自然なことです。

感情を抑えずに受け入れることが大切。
悲しみや怒り、喪失感などの感情を感じてもよいと自分自身に許可することが重要です。

その感情は失った人やモノへの愛情があってこそ生まれたもの。

その痛みを押さえ込んだり、邪険にしたりしないでください。

自分のペースを尊重する

自分自身の感じるペースで向き合うことが大切です。

無理して感情を処理しようとするよりも、自分の準備ができるまで待つことも有効な方法です。

気持ちが落ち着かないときに逃げ込める安全な基地を確保しておくのも大切。

心地のいい場所や音楽を、余裕があるときに探してみましょう。

サポートを求める

グリーフを一人で抱え込む必要はありません。

友人、家族、専門家、カウンセラーなど、信頼できる人々に話を聞いてもらうことで、感情を共有し、受け入れや理解を得ることができます。

健康を大切にする

グリーフの時期には、身体的健康を保つことも重要です。

気分が晴れないときは、散歩をしてみましょう。

風に吹かれたり、遠くの緑をながめたりすることで、気分を変える助けになります。

また、朝、目覚めて行動を起こす前に、
自分のコンディションをチェックしてみましょう。

『嫌な夢を見た』
『眠りが浅かった』
『お腹が減った』など。

心身を丁寧に観察する癖をつけることで、自分自身の気持ちの状態をつかみやすくします。

健康を意識し大切にすることは、ストレスを軽減する助けとなります。

リラックスや癒しの方法を試す

グリーフによるストレスを和らげるために、リラックス法や瞑想、お寺の坐禅会、ヨガなどを活用してみましょう。

また、自分の好きな趣味や活動に時間を割く、お寺や教会、神社などに行ってみるのも心地よい気分転換となります。

お坊さんなどの宗教者のお話しを通じて、喪失感を和らげる気づきや、不条理を受け入れるヒントと出会えるかもしれません。

新たな意味を見つける

グリーフの過程を通じて、新たな意味や目的を見つけることがあります。

失ったものへの感謝や尊敬の気持ちを抱くことで、成長やポジティブな変化をもたらすことがあります。



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グリーフケアについて

「ここより」では、グリーフケアについて詳しくまとめた記事があります。
こちらも是非ご覧ください。

【↓関連記事】
「グリーフケアとは。深い悲しみから立ち直るための支援と選択肢」

まとめ

大切な人やモノを失ったとき、様々な感情や想いが湧きあがります。

グリーフは人々の感情や行動にさまざまな影響を及ぼすことがあり、これらは個人によって異なる程度で現れます。

また、グリーフは時間とともに変化し、段階を追って受け入れや調整へと移行することもあります。

グリーフを処理するためには、感情を受け入れ、感じることを許容することが重要です。

「感じるまま」に大切に受け止め、受け入れることによって気持ちがほんの少しでも楽になるかもしれません。

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