私は以前、目黒で住職をしていた頃、「ドラクエ法話」という会を数回行っていました。
コロナ禍の中で、なかなか開催がままならないので、
今までの法話のアーカイブを、ここよりで公開していきます。
どうぞご覧になっていってください。
ドラゴンクエストには、大事な人生の選択として「転職」というイベントが出てきます。
私は僧侶(ドラクエの職ではなく、浄土宗の)資格を持っておりますが、
大学卒業後、書籍の制作会社で10年間働いておりました。
まったく僧侶と関係のない10年間。
厳しい業界の中、ツラい日々ではありましたが、
密度の濃い、社会人として鍛えられた10年間でもありました。
サラリーマンの「転職」には、なんとなくネガティブなイメージがつきまといます。
「忙しすぎる」
「ここはブラックだから逃げだしたい」
「給料が少ない」
というような、後ろ向きの理由による転職になりがちだからです。
でも本来は、
「自分のキャリアを上げたい」
「やりたい道を探したい」
「家庭と両立したい」
という、前向きの理由であるに越したことはないのです。
ドラクエの転職は、今までの能力も活かしつつ、
新たな能力を手に入れるための、前向きなものです。
「魔法使い」の呪文も使える「戦士」や、
「武闘家」の素早さをもった「僧侶」など、戦闘で役立つ職業スキルを、
たくさん身につけることができます。
特に、ドラクエ3の転職は、レベル20にならないとさせてもらえません。
一人前になってから転職しろ、と言われてしまうのです。
ツラかった仕事も、継続すれば、のちに力になります。
私も、書籍制作の仕事はツラかったですが、
目黒での住職時代には、会報誌などの制作にスキルが役立ちましたし、
組織の中での管理職の経験も、寺務所の運営に活かすことができました。
また、意外と、お寺の外の社会で揉まれた経験のある僧侶は少なく、
そういった経験から文庫本の執筆依頼もありました。
皆さんが今やっている仕事も、
まわりとの縁で出会うことができた、かけがえのないものです。
「死にたいほど辞めたい」のを我慢する必要はありませんが、
目の前の仕事を積み重ねていくことで、良縁につながることもあるのです。
ドラクエ3では、「賢者」になるにあたり、
「さとりのしょ」を読まなければなりませんが、
実は「遊び人」を経ることで「さとりのしょ」を読まなくても「賢者」になることができます。
いっぱしの「遊び人」になることも「賢者」への道なのです。
私も、会社員経験や、大寺院での住職経験を経て、今があります。
そしてドラクエの生みの親である堀井雄二さんも、
早稲田大学の漫研時代や、編集者としての経験を活かし、
日本にRPGを根付かせることに成功しました。
全力で仕事するのも、遊びの限りを尽くすことも、一本の芯がいります。
ひとつの道を究めることが、さとりの道につながるのです。
写真協力
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著者紹介
鶯 蒼治郎
謎の浄土宗僧侶。
その正体は闇に包まれているが、以前は目黒で活動していたS山T郎ではないかとも言われている。
《著書》
三笠書房・知的生きかた文庫より『流されない練習』発売中
《関連情報》
根岸・西念寺にて「ドラクエ法話」不定期開催
西念寺ホームページ:http://sainenji.tokyo/
立正大学仏教学部卒業。東京仏教学院卒業。浄土真宗本願寺派僧侶。
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