悟空と悟飯の「闘う理由」

悟空は、「より強い相手と闘いたい」という気持ちを持っています。
それゆえに、人造人間が襲ってくる未来が来るとわかっていても、「ドクター・ゲロをいまのうちにやっつけちゃったら?」というブルマの案に対し、「わ…わるい。正直いって、オラも闘いてえ…」と反対するのです(ジャンプコミックス28巻p158)。

また、敵を殺すことにもこだわっていないので、セルゲームで悟飯にバトンタッチする時も、体力を消耗しているセルに仙豆を渡し、回復させます。「フェアじゃない」からです。

それに対し悟飯は、闘うこと自体は好きではありません。セルに対しても、「こんな闘い、意味がない」と、セルゲームの中止を訴えます。
「ボクは、ほんとうは闘いたくないんだ…。殺したくないんだよ……」
「…たとえ、おまえみたいにひどいヤツでも……」(ジャンプコミックス34巻p121)
スーパーサイヤ人になりながらも、セルに向かってこう言ったシーンが印象的でした。

悟飯は、悟空からバトンを受けたものの、自分の力をなかなか発揮できませんでしたが、人造人間16号から「正しいことのために闘うことは罪ではない」と言われ、スーパーサイヤ人2になります。
闘うことが好きではない悟飯には、闘う理由が必要だったのです。

「正しいことのため」という危険

スーパーサイヤ人2になった悟飯は、圧倒的な力でセルを追い詰めますが、珍しく「とどめをさせ」という悟空の言葉に対し「あんなやつは、もっと苦しめてやらなきゃ」と言って、セルのことをさらに痛めつけにかかります(ジャンプコミックス35巻p40)。

その結果、開き直ったセルが「自爆」という戦法をとり、悟空の死につながってしまいました。

最終的にセルを倒すことには成功しますが、悟飯の判断の甘さが目立った場面でした。

「正しいこと」のために闘いを開始したはずの悟飯でしたが、いつの間にか、「セルを苦しめる」という目的も加わってしまい、あの結果となってしまいました。

そこには「正しいこと」に対する思いの変化があったのではないでしょうか。

「正しいこと」のぶつかり合いが戦争を生む

争いごとをしていると、どうしても心が荒んできます。最初は「地球のため」「仲間のため」「16号の好きだった自然や動物たちを守るため」だと思っていた悟飯にも、いつしか「敵を痛めつけたい」という思いが出てきてしまいました。

セルにも「完全体となった実力を試したい」「恐怖におびえる人間の顔を見たい」という目的がありました。
「正しい」とは言い難いですが、本人にとっては大事な、そして正当な目的だったのでしょう。

しかしセルも、悟飯に敵わないと悟った瞬間、本来の目的とはかけ離れた戦法をとってしまうのです。

どちらも「正しい」と思っている人同士がぶつかり合うのが「戦争」です。

「正しい者同士」がなぜぶつかるのかというと、「正しい」という思いが、いつしか「相手が間違っている」という思いに変化してしまうからです。

悟空は敵とぶつかり合わない

悟空は死後、「自分が悪いやつを引きつけてるのかもしれない」という思いから「生きかえらせてくんなくて、いいや」と、あの世に残ります(ジャンプコミックス35巻p134)。

悟空は、確かに悪いやつを引きつけていたのかもしれません。

ですがそれは、悟空が「より強いやつ」を求めて修行をしていたからです。

そこには「正しいこと」も「悪いこと」もなく、純粋な「向上心」や「好奇心」があるだけです。

だから悟空は、思想的に敵とぶつかることがありません。

つまり「戦争」にならないのです。

ピッコロやベジータにとどめをささなかった悟空は、彼らと心を通わせることにも成功しました。

悟空の純粋な心が、結果として平和を呼んだのです。

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著者紹介

鶯 蒼治郎
謎の浄土宗僧侶。
その正体は闇に包まれているが、以前は目黒で活動していたS山T郎ではないかとも言われている。
《著書》
三笠書房・知的生きかた文庫より『流されない練習』発売中
《関連情報》
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西念寺ホームページ:http://sainenji.tokyo/