引き続きこちら寄稿させていただきます。今回はまず上の動画をご覧ください。
見ていただいてお分かりになるようにチタンはアイディアとして突飛なものではなく、今の時代の必然となりうる素材です。
時代の変化、環境の変化 様々な要因があり今現在ある伝統建築の技法はベストのものとは言えなくなっています。
具体的に言うと檜皮に関しては耐用年数がせいぜい30年、それも昔ながらの適正な材である場合です。
文化財などにのみにしか使用されないため、一般的な需要はありません。
また木材は伐採してから数年間は自然乾燥しないと使うことは出来ません。
どれだけの数の大工さんがその木材を確保できるのか?
確保したところで安定的に仕事が回ってくるのか?
大工さんは常に不安と戦っています。
経済はどうしてもインスタントの方に流れていきます。
磨き上げてきた技術が活かされていない状況です。
銅板は一時、その軽さと加工のしやすさ緑青などの美的観点も含め屋根材として人気でした。
銅板だけでは耐用性も長いですが瓦との相性、そしてこれに追い打ちをかけるのが酸性雨です。
これらの要素が重なり合うことで、穴があくなどの例が報告されています。
また溶出したものが苔などに影響するとも言われています。
実は私たちは屋根を葺き替えるということを自明の理として知っています。
それは葺き替えるという言葉があることからもわかります。
文化財とは歴史を経て初めて文化財となります。
いくらその躯体が素晴らしくてもこれを長い年月維持することが文化財の前提です。
今回、使用を考えているチタンの特性についてまとめてみました。
強い 強度は鉄と同等軽い 鉄の約60%
錆びない 卓越した耐海水性
良加工性 鉄と同等の加工が可能 非磁性 磁器を帯びることがない
低熱膨張 膨張が小さくガラスやコンクリートと同等
環境適合性 イオン溶出が極めて少なく金属イオンアレルギーが起こりにくい
意匠性 金属地肌の風合いと様々な表面仕上げが可能に
というものがあります。
軽く、強く、錆びにくいことは、よく知られている特性ですが、それ以外の多彩な特性と、その実力についてはあまり知られていませんでした。
チタンは1790年に発見され、その後長い熟成時間を経て1948年に工業生産を開始した新しい金属です。
埋蔵量が豊富で実用金属の中では4番目に多いと言われています、生体親和性に富んでいるため人や環境に優しい金属であり、研究・開発していく中で様々な新しい可能性を見せてくれる素材です。
まず初めにその強度から宇宙開発で採用され、その耐食性から化学や電力分野で採用されてきました。
さらに現在では意匠性が加わりより身近に使われるようになっています。
私たちは今回のチタン屋根の技術が令和時代に生まれた新しい伝統建築の技術として広く知られ一般化されることを望んでいます。
そしてそれは実現可能です。
今ある歴史ある伝統にも始まりはあったはずです。
何事も挑戦、誰かが先陣を切らなければ始まりません。
自分たちだけでなく 子供 孫 その先の未来まで考える。
昔の数寄屋大工は何百年先を見据えて仕事をしてきました。
先人たちに出来たことは私たちにも出来るはずです。
このネガティブな風潮を打破したい。
その為の今回のクラウドファンディングへの挑戦です。
多くの文化財を抱える社寺は文化財の保存維持に頭を悩ませています。
今回、開山堂のチタン屋根葺き替え工事を行う大工棟梁は木下幹久です。
前述したように屋根は消耗品です。
檜皮など伝統建築で用いられてきた素材は美的もとてもすばらしくそれぞれに良さがあります。
ただ耐用年数を考えるといずれも短く、短期的なスパンで修繕を行わないといけません。
素材の費用だけでなくそれにかかる人件費、工事にかかる足場の費用。
これをこれからもやり続けることはかなり困難です。
それに比べてチタンは100年、200年持ちます。
屋根の問題をクリアできるとその美しい躯体、日本の伝統建築の粋を集めたその建築は何百年も維持できるのです。
これは私たちの時代から新たに文化財が生まれる可能性があるということでもあります。
誰かが始めなければ何もはじまりません。
私たちの世代が未来へと法灯をつなげていかなければいけません。
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立正大学仏教学部卒業。東京仏教学院卒業。浄土真宗本願寺派僧侶。
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