ヤムチャは古くからの登場人物ですが、
悟空たちの戦いのスケールが大きくなるにつれ、
敵に“やられて”しまうことが多くなってしまいました。

そのため単行本でまとめ読みした読者の中には
「やられ役」や「咬ませ犬」といったような印象をもつ人もいるようです。

確かにヤムチャはサイヤ人襲来のときには前座ともいえる栽培マンと相打ちになってしまうなど、
武道家としては比較的詰めの甘さが目立つキャラクターです。

天下一武道会の実績も悟空やクリリンに劣ります。
ですが、決して戦闘力が著しく弱いわけでも、
戦闘におけるセンスが極端に悪いわけでもありません。

それなのに、彼自身あまり優れた成績を残すことができていないというのは亀仙人に弟子入りしたタイミングがふたりよりも遅く、
基礎を教わった時間が短かったことが少なからず影響しているのかもしれません。

武道家としては年下の悟空やクリリンに後れをとってしまうヤムチャですが、
実は仲間たちの中で非常に重要な役割を担っています。

占いババの館で5人の戦士と戦うことになったときのリーダーシップは年上である自覚からくるものでしたでしょうし、
その後、天下一武道会で天津飯や餃子から挑発を受けたときも、
悟空やクリリンの代わりに矢面に立って読者の溜飲を下げました。

栽培マンと相打ちになってしまうときも、
一度死んでしまっているクリリンに万が一のことがあってはいけないという思いから、
自分が先に立ちました。
結果は伴いませんでしたが、あの場でできる最善のことをヤムチャは行ったのです。

禅の教えで重要なことのひとつが「今、ここ、生きる」という考え方です。
仏教では「過去」も「未来」も自分の頭の中にしかなく、
あるのは「今、この瞬間」だけだという考え方をします。
つまり、「生きること」とは今この瞬間にできる最善を積み重ねていくことなのです。

序盤、ピラフ一味に悟空やブルマ、ウーロンらと共に監禁部屋に閉じ込められてしまったときには、
率先してダジャレを言うことで場を和ませようとしました。

また人造人間との戦いのときには、
心臓病になってしまった悟空を家に連れて帰る役割を買って出たこともあります。

あのときも戦闘では役に立てそうにないという自らの判断に基づいて行動をしました。
栽培マンのときも天津飯からの挑発を受けたときも、彼はその瞬間にできることの最善を尽くしたのです。
ヤムチャは武道家としては悟空やクリリンに及びませんでしたが、
ふたりにとってはずっと良い兄貴分なのです。
悟空やクリリンもヤムチャがいてこそ強くなれたといえるでしょう。

世の中は人と人との縁によって成り立っています。
縁の中で自分の役割を果たしていくことで、人は生かされ、そして生きているのです。

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著者紹介

鶯 蒼治郎
謎の浄土宗僧侶。
その正体は闇に包まれているが、以前は目黒で活動していたS山T郎ではないかとも言われている。
《著書》
三笠書房・知的生きかた文庫より『流されない練習』発売中
《関連情報》
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西念寺ホームページ:http://sainenji.tokyo/