シーズン５６号本塁打達成！「村神様」効果で参拝者増の日蓮宗・宗隆寺に行ってきました

嶋田一成上人に会いに
突然ヤクルトファンの聖地に
５時間後の奇跡
「ファン心理」と「信仰心」
日蓮宗興林山宗隆寺アクセス情報
- 関連記事【佐山拓郎】
- 関連記事【ここより体験記】

嶋田一成上人に会いに

川崎市高津区にある、日蓮宗寺院、宗隆寺。
そのお寺に向かっていた私は、溝の口駅を降りたあと、「栄橋」という交差点で道を間違え、約束の時間に少し遅れていました。
栄橋を曲がりなおし、ようやくたどり着いた宗隆寺の山門では、何人かの参拝客が写真を撮影していました。

５００年以上の歴史をもつ古刹の宗隆寺ですが、先月のお彼岸あたりから突然「聖地」と呼ばれるようになったのです。
その理由に迫るため、宗隆寺の副住職である嶋田一成上人に話を伺いにきた私は、少し興奮していました。野球ファンの血が騒いだのです。

嶋田上人と会うのは約半年ぶり。あの「ニコニコ超会議２０２２」の打ち上げ以来です。
「向源」関係者なら、その名前を知らない人はいないでしょう。「東京向源」の代表でもある嶋田さんは、忙しい中、約束の時間を守れなかった私を笑顔で迎え入れてくれました。

突然ヤクルトファンの聖地に

「ツイッターで、じわじわと話題にはなっていたんです」
いつもの人懐っこい表情で、嶋田上人は語り始めました。

東京ヤクルトスワローズの主砲、村上宗隆選手が、王貞治さんの持つ、日本人選手のホームラン記録に並んだのが９月１４日。チームの優勝マジックも一桁になり、盛り上がる中、村上選手と同じ名前の宗隆寺という存在がクローズアップされ、新記録を期待するファンがお参りするようになったのです。

「宗隆寺は、お侍さまの名前をいただいて、その名がつけられたので、まあそんな事もあるかと思ってたんですが、隣の『高津幼稚園』や、近くの『ヤクルト保育園』のことまでつながると、これはちょっとスゴイな、と」
宗隆寺の隣に、ヤクルトの高津監督と同じ名前の幼稚園があり、さらに、近隣にヤクルト販売会社が運営する保育園もあり、「聖地巡礼」するファンが少しずつ増えていたところに、サンケイスポーツが１面で宗隆寺を紹介し、参拝者が急増したのです。

「記事の翌日から、御朱印や御守りの授与希望が増えました。ちょうどお彼岸のタイミングと重なって、大忙しでしたよ」
嶋田上人は、終始笑顔で語りました。

５時間後の奇跡

５５号が出てから少し足踏みした村上選手。新記録は最終戦に持ち越されました。
「最終戦の日、フジテレビのアナウンサーの方が祈願に来られたんです。その５時間後でした。５６号が出たのは」
なんと、村上選手の５６号には、嶋田上人の祈願が関わっていたのです。そして、そのホームランは令和初の三冠王を決定づける一発でもありました。

「それから祈願法要の依頼も増えました。こないだは、ドラフト候補のお孫さんをもつお婆ちゃんから『孫が好成績を残せますように』と頼まれましたよ」
「村上選手という、ひとりの選手を通じて、お寺に影響が出ているなんて、スゴイ事ですよね。やはりスーパースターなんだと思います」

私は、日本のどこかに「周平寺」か「昂弥寺」、もしくは「ビシエド寺」という名の寺院がないかどうか、調べなければならないと感じていました。
プロ野球ファンは、ゲン担ぎや願掛けが大好きなのです。

「ファン心理」と「信仰心」

「あまり野球のことは知らない」という嶋田上人ですが、野球ファンについて驚いたことがあるといいます。
「参拝マナーがいいんです。いわゆる『フーリガン』みたいな事を想像していたんですが、うるさくもしないし、お参りの作法なども勉強されているんだ、と感じました」
「きちんと作法にのっとって参拝することで、スワローズへの愛や、村上選手をはじめとする、ヤクルトの選手たちが活躍できるよう、祈っているんだと思います」

さらに、こう続けました。
「身につまされました。私は、ヤクルトファンの皆さんの想いほど、仏さまのことを愛しているだろうか、と」
嶋田上人は、「ファン心理」と「信仰心」を結びつけ、自分を見つめなおしていました。

「村上選手自身は、きっとまだ宗隆寺のことをご存じないと思いますし、当然お会いしたこともありません。いつか来てくれたら嬉しいですね」
そう語る嶋田上人の笑顔からは、仏教者としての矜持がにじみ出ていました。