八月出版予定の『日本昔ばなしの心』

みなさん、四ヶ月ぶりです。

ゴールデンウィークはいかが過ごされましたか?
私は観光客が押し寄せる三浦半島の先っぽで、畑と海に囲まれた自宅で、日々変わりなく執筆と子育てに励んでいました。
三浦大挙は夏の風物でしたが、金色週間とは‥‥。
きっと、多くの人がコロナ圧から逃れたいのでしょうね。

さて、いま私は数冊の本の執筆に専念していますが、その一つに、『日本昔ばなしの心(仮)』があります。
今年の八月くらいに日本橋出版さんからお届けできるでしょう。

この本は、日本昔ばなしを使い、六人の和尚さんと私が対話をしながら、うっかり気づかないまま通り過ぎてしまいそうな「日本の心」を紹介していくものです。

京都と滋賀の和尚さんたちが伝えてくださるのは、厳しいだけの道徳的な訓戒ではありません。
お話はユーモラスに快活に、これが基本のキです。
しかし時に厳しく、そして話し手である私たち自身を振り返り鼓舞するような仕上がりになっています。

そんな和尚さんとのお話をこれから定期的にみなさんに紹介したいと考えています。

その開幕として、京都の養徳院の横江和尚のお話の一部をご紹介します。

素材はあの『金太郎』、テーマは「プライド」です。

日本昔ばなしの力

横江和尚

本昔ばなしは、大人になって読みかえしてみると、その味が身にしみてきます。
昔ばなしに限らず、小説や物語には作者の意図があるのでしょう。
ただ表面を舐めるだけで、そのあたりをふわっと感じるだけになってしまうことが多いのですが、日本昔ばなしには、様々な経験をしてきた大人だからこそ認められるテーマや学びが潜んでいます。

大竹

大人になってようやくですね。

横江和尚

そうです。
ただ話を理解するだけでなく、大人だからこそ気づけたことを子どもたちと一緒に共有していけるのは、とても貴重な機会だと思います。

大竹

このような機会ができたのも、おそらく時代の後押しがあったのでしょうね。

横江和尚

そうですね。
新型コロナウィルスによる災厄は、私たちに深い傷を残しています。
しかし、このような傷をただ癒すだけでなく、私たちがこの災厄から何を学ぶかによって、未来は変わってくるでしょう。

大竹

批判の矛先は、たいてい、政府や自治体やメディアに向けられてしまいます。

横江和尚

それでは、まるで意味がないのです。
私たち各々が大いに反省して、各々に得られるものがなければならないでしょう。
もし、このような反省をしない人が大多数で、ただ元の生活スタイルを取り戻すことのみに固執してしまったら。
あまり考えたくない未来ですが、同じようなことは必ず繰り返されるでしょう。
私は禅宗坊主で、大竹さんは哲学者。医者でもなければ科学者でもありません。
確かに科学者たちは、このようなことが再び起こらないようにする力量を持っているでしょう。
しかし、今回のコロナ禍は、どの専門家も戸惑ってしまったんです。
何をどうすれば正解だったのか、きっと誰もわからなかったでしょう。
問題は「専門家は対策をすべきで、素人たちは何もしなくていい」という考え方です。
反省すべきは、私たち各々なんです。今回の災厄からしっかり学び、それを後世に伝えていかなければなりません。

大竹

もしそれができなければ……。

横江和尚

今回よりさらに過酷な事態になってしまうかもしれません。

あなたの「プライド」は?そしてその「プライド」をどのように伝える?

私のライフワークの一つは、日本昔ばなしを教育現場にリバイバルさせることです。
そこで大切なのは、正しいこと、評価が高いことを伝え「ない」ことです。
むしろ、そこから一旦外れてみる。
そして、自分の体験をベースにして再考してみることが、大切なんですね。
そのためには、場所と仲間が大事。

みなさんとは、そんな場所を共有する仲間になれるといいですね。

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