日本中に衝撃を与えた事件によって、今、「宗教2世」が注目されています。
テレビ番組を中心とした、さまざまなメディアが、その問題点などについて論じていますが、そんな中、紆余曲折あって発売された、このマンガをご存知でしょうか。

親世代が宗教の信者であり、幼い頃から親と一緒に宗教の教えにふれ、影響を受けて育ってきた「宗教2世」たちの体験が7編収録されているこのマンガ、単行本の発行までにも紆余曲折あったようです。詳しくは本書を読んで確認していただきたいのですが、その経緯も含めてすごいマンガだと思います。

7編すべて、いわゆる「新興宗教」の2世の体験談となっています。注意していただきたいのは、このマンガでは、宗教自体の「教え」のことを悪く言ったり、認めない、と言っている訳ではありません。
親から教えを受け継ぐにあたり、そこに幸せを感じ、信仰することを選ぶ生き方について、否定している訳でもありません。

このマンガが主張しているのは、「まだ親の影響が大きい『幼少期』から『無理やり』信仰の場に連れ出され、結果として、幸せから遠ざかっている人」が「いる」という事実です。

繰り返しますが、描かれている「宗教」自体や、それを信仰している「信者」の方々を否定している本ではないのです。

親やまわりの大人のいう事をよくきく「良い子」たちが、自分で考える機会を奪われ、誰もが「道を選びとる権利」を持っている、ということに気づけない。
学校や社会に出たときに、まわりとの違いにとまどい、不安になってしまう。
「教え」をたてにとりそれを「守らないと不幸になる」と、反論できない幼い子どもに押しつけ、その行為を「いいことをしている」と信じている親がいる。
こういった「事実」を、このマンガは伝えています。

浄土宗で大事にしている考え方に「選択(せんちゃく)」という概念があります。
「自分自身で道を選びとり、選んだその道で全力を尽くす」という意味です。
「自分で道を選ぶことができる」というのは、人生における「悦び」「幸せ」のひとつです。
多くの「宗教2世」たちは、親やまわりの大人たちから、その機会を奪われてきたのです。

「毒親」に悩まされている方の声も多く聞かれる現在ですが、逆に「親は好きだから苦しい」という声も紹介されています。
「信仰の押しつけは辛いけど、親と意見が違ってしまうことで、悲しませてしまうのも辛い」というのです。なんと切ない意見でしょう。

宗教が身近にある人も、そうでない人にも、ぜひ読んでもらいたいマンガです。

書籍情報

著者:菊池 真理子
書名:「神様」のいる家で育ちました〜宗教2世な私たち〜
初版:2022年10月10日
サイズ A5判/ページ数 144p/高さ 21cm
ISBN 978-4-16-090134-6

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