エレクトーンで葬儀に彩りを加える『献奏』。
今回『心の音社』代表の中村麻由氏に、『献奏』について、浄土宗僧侶 佐山師が話を聞いた。
「エレクトーン献奏」を行うきっかけ
ヤマハでエレクトーン奏者として働いていた中村氏。
ある時、たまたま依頼を受けた、『お葬式』での演奏がきっかけとなり、独立して『心の音社』をはじめる決意をします。
「悲しい現場だったのですが、喪主の方から『最後に親孝行ができました。いい式にしていただき、ありがとうございました』という、感謝の言葉をいただいたのです。
亡くなった方にとっては人生最後の日になりますし、ご遺族の方々にとっては、一生の記憶に残る瞬間になる。やりがいのある現場でした。
ヤマハでエレクトーンの普及(生徒募集や楽器販売)の為に演奏していた頃も楽しかったけれど、音楽をやってきて、初めて『人の役に立つ演奏』ができた気がしたのです」と語る中村氏。
こうして、葬儀において最も大事な『故人とのお別れ』をエレクトーンで演出する『献奏』は誕生したのです。
献奏をエレクトーンで行う意味
『ピアノ演奏』の依頼もあるという中村氏ですが、『エレクトーン』での演奏の良さについて、こう語っています。
「まずは、エレクトーン1台で、あらゆる楽器を演奏できるということです。弦楽四重奏やオーケストラといった多重奏はもちろん、クラシックギターやお琴などの特殊な楽器の独奏まで、エレクトーンならひとりで演奏することができます。
実際にお琴の師範だった女性のご葬儀では会場にお琴を持ち込むことが難しかったため、エレクトーンでお琴を演奏しました。他にも、競馬好きの男性は、GⅠのファンファーレ(吹奏楽)で開式、また出棺したこともあります。このように、亡くなった方が好きだった楽曲や音色、縁のある事柄やご趣味など… エレクトーンなら、故人様やご遺族のあらゆる意向に沿った演奏ができるのです。
葬儀社や司会者、そして何より喪主をはじめとするご遺族と入念な打ち合わせを行い、演奏曲を決めます。
童謡・唱歌からヒット曲まで、幅広いリクエストがあるそうですが、当然、すべての曲を知っている訳ではないため、依頼があってから聴きこんで、葬儀向けのアレンジを行うことも多いといいます。
音楽は星の数ほどありますので、故人の母校の『校歌』や、世代的に馴染みのない『軍歌』など、知らない曲のリクエストも非常に多いです。そのような場合は、動画サイト等で音源を探して楽譜を起こし、葬儀向けにアレンジしたものを演奏します。
CDなどの音源が無かったり、ご葬儀には不向きな楽曲を、葬儀に合う形で演奏してあげられた時は、ご遺族から大変喜ばれます。
野球好きの故人のために、球団応援歌をご葬儀にふさわしい曲調にアレンジして演奏したこともあります。」
人は、人生の中で、色んな時期に色んな曲を聴いています。
様々なリクエストに、できるだけ応えたいという中村氏の思いが、エレクトーン献奏には詰まっているのです。
音楽は供養の心につながる
葬儀式は、故人との別れでもありますが、残された遺族の心のためでもあります。
「葬儀式の簡素化が進み、形式通りに淡々と流れていってしまうお葬式も多いですが、亡くなった人ときちんとお別れすることが、残された人たちの悲しみを癒し、慰めることに繋がると思っています。
故人の人生最後の日が、少しでも『その人らしい』ものになり、残された方々が『良い最後だった』と感じられるよう、精一杯考え、演出しています。」
中村氏は、”音楽には、記憶を呼び起こす力がある”といいます。
「葬儀で流れた曲を、ふとした時に思い出すと、一緒に故人のことも思い出すと思うのです。」
亡くなった人の最大の供養は、その人を思い出すことです。
思い出に残る葬儀式にすることで、その後の供養の心が自然と呼び起こされるのです。
今では、寺院行事での演奏を依頼されることも増えてきたと言います。
花まつりでは、『子供向けアニメソングコンサート』、お施餓鬼では『季節の名曲コンサート』、お彼岸法要では『献奏コンサート』など、お寺でのイベントに花を添えることは間違いないでしょう。
「今後も、エレクトーンを通じて、参列者の心に残る演奏を届けていきたいです」と語った。
エレクトーンを通じて、心に残るお別れを演出する『献奏』。
献奏の時間が、故人様とご遺族を繋ぎ続けるのです。
心の音社
故人が好きだった曲、故人を思い出す曲、故人への最後の贈りもの…音楽は人の記憶を蘇らせ、在りし日の思い出を会葬者全員で共有することができます。
本当の意味 “ 故人様とあなたを繋ぐ時間 ” を、音楽で作ります。
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立正大学仏教学部卒業。東京仏教学院卒業。浄土真宗本願寺派僧侶。
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