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凛咲 Vol,2 -親のこと 家族のこと 私のこと- | ここより

2023年12月23日(土)発売開始【凛咲  Vol,2 -親のこと 家族のこと 私のこと-】2022年まで発売されていた葬儀業界の雑誌「葬祭流儀」を大幅リニューアルし、ライフスタイ…

飾りじゃないのよ祭壇は

その日は、高齢のお婆さんのお通夜でした。

式場に到着したら、まずご遺体に挨拶するのですが、驚きました。
通常、お花で飾られている祭壇が、一面「福山雅治」さんの写真だったのです。

私がしばし絶句していると、喪主であるご長男が近づいてきました。
「スミマセン、お花の祭壇じゃなくて」「母のたっての希望だったのです」

お通夜ぶるまいの席で、いろいろお話を伺いました。
夫を亡くしてから元気を失っていた故人でしたが、ある日、歌番組に出ていた福山さんに一目ぼれし、元気を取り戻したこと。
その日から、福山さんのCDを全部集め、毎日のように聴き続けていたこと。
テレビ出演はもちろん、ラジオ番組まですべてチェックしていたことなどなど。

「福山さんって、ラジオ番組だと若干の下ネタなんかも喋ってたみたいなんですけど、そういうのも含めて大好きだったんです」と、ご遺族が笑顔で教えてくださいました。

晩年は、入院生活も長かった故人でしたが、病院中にファンぶりが伝わって、先生や看護師をはじめ、他の入院患者の方からも「昨日福山さん出てましたね!」と声をかけてもらっていたとのこと。
「福山さんのおかげで、充実した人生だったと思いますよ」

翌日、個人の棺には、さまざまな福山グッズが納められました。
いつもはその時、後ろで小さくお念仏を唱えるようにしているのですが、当然のように福山さんの歌が流れているので。その日はお念仏をやめて、一緒に鼻歌を歌うことにしました。
「桜坂」でも「家族になろうよ」でもなく「Message」という曲の「♪絶対キミが好きだよ」という歌詞が、妙に心に突き刺さりました。

火葬のあいだに教えてもらったことが、今でも忘れられません。
「お袋、福山さんが結婚してから、しばらくラジオ聴くのやめてたんです。嫉妬で(笑)」

女性はいくつになっても乙女なのです。

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