書籍紹介

昭和10年(1935年)に創刊された月刊誌『浄土』(法然上人鑽仰会)。
創刊当時は鉄道弘済会(現キオスク)で『文藝春秋』と売上部数を競ったほどの人気があったという。
著者の浄土宗戒法寺住職 長谷川岱潤師は、この月刊誌『浄土』の編集長を1990年代中頃より、25年間に渡り編集長をつとめられた。
本書『仏心独語』は、この25年間の編集長時代に書き溜められた月刊誌『浄土』編集後記と、自身が住職をつとめる戒法寺のホームページに掲載された法話を含めた、およそ30年間におよぶ256篇を一冊にまとめたものである。

長谷川岱潤師は本書について、
「『浄土』という雑誌の品格を保ちながら、自分たちの主張は曲げないという、そんな信念を保つことを心に刻みながら作ってきた雑誌です。そんな思いがこの「編集後記」に込めてあることを感じながらお読み頂けたらうれしく思います。」(本書「あとがき」より)
と語る。

長谷川岱潤師が見たその時代ごとの出来事に自作の句を添え、
ときには日記のように、ときには手紙のように、ときには鋭く一刀両断する。

長谷川岱潤師について、本書「「序」にかえて(佐山哲郎)」にはこうある。

「直言の人である。
ボクシングでいえば細かいジャブなど打って様子を見たりしない、
ストレート一本。野球のピッチングでいえば変化球を投げない。
ズドンと一直線、剛速球で勝負する。
それでいて都会的な繊細さも持ち合わせている。
なにより礼儀正しい。」本書「序」にかえて(佐山哲郎)より

およそ30年間の出来事が“直言の人”長谷川岱潤師のフィルターを通して蘇る。
あの事件・事故やあのブーム、あの出来事を長谷川岱潤師はどう捉えたのか?
懐かしさに新鮮さを交えながら、平成から令和へと移りゆく時間を改めて堪能できる作品。

以下に、2011年3月11日の東日本大震災直後の編集後記を抜粋する。

【以下、本書より抜粋】

平成二十三年四月一日〈七十七巻四月号〉

一族の彼岸の墓を巡り米て

 三月十一日、千年に一度と言われる未曾有の大地震が起きた。束京の我が寺でも、本堂の瓦が落ちたり、灯ろうが倒れたりと大騒ぎをしていたが、テレビの画面に映し出される津波の恐ろしさに言葉を失った。何度も繰り返し放映される各地の様子に、その都度胸が締め付けられ苦しい時間を過ごした。自分が被災地にいくことなどもちろんできないが、救助に奔走される自衛隊員や消防隊員、消防団員、警察官、役場など行政の方々、そして原子力発電所で身の危険と隣り合わせの中活動される作業員の方々など、その素晴らしさにただただ感激していた。
 そして十四日から東京でも計画停電と交通機関の通行の縮小が始まろうとしている。各自が各家でしっかり節電することが求められ、我が家でも必要最小限以外のコンセントをすべて抜いて歩いた。トイレ、換気扇、エアコンなど実に多くのコンセントで電気を使っていたことがわかった。
 今この国の国家像が大きく変わろうとしているように思われる。繁栄と豊かさの中、「痛み」と「苦しみ」を忘れてしまった国民が、今しっかりとその「痛み」と「苦しみ」に向き合っている。経済の発展ばかりを考えてきた国民が、そうではない幸せを考えることができるようになったように思われる。
 あまりにもつらい悲しみの現実の中で、一筋の光を見出すとすれば、そういうことかもしれない。

【以上、抜粋】

書籍情報

【書籍名】月刊「浄土」編集後記集 仏心独語
【著者名】長谷川岱潤
【出版社】株式会社 西田書店
【出版日】2022年11月18日
【頁 数】356ページ
【目 次】
 「序」にかえて 佐山哲郎
  編集後記/平成七(1995)年(p11〜)〜令和二(2022)年(p304〜)
 〔付録〕長谷川岱潤法話集(p311〜)

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