日本人ならば、神社にお参りする機会も多いでしょう。参拝には自分の気持ちや心の持ちようが大切であるとされていますが、参拝方法を知らないというのでは格好がつきません。

神様への敬意や自分の気持ちを示すためには、やはり目に見える形をなぞることも大切です。気持ちが大切だというのであれば、正しい参拝方法を把握しておき、失礼のないよう配慮することが必要だといえるのではないでしょうか。

手水舎編

 日本の神様はとりわけ穢れを忌み嫌うため、参拝は海水や川などに全身を浸して身を清める禊をしてから行うのが本来の参拝形式です。今現在でも一部においてこの風習が色濃く残っています。たとえば島全体が宗像大社の沖津宮の境内となっている沖ノ島には、浜で禊をしてからでなければ上陸することはできません。そうは言っても、一般の人は島への上陸は原則禁止なのですが……。

 禊を行うのが本来の参拝形式とはいえ、禊をするためには裸にならなくてはいけません。また、多くの人が同時に行うのも難しいですよね。このハードルを下げるための代替案として編み出されたのが口と手を清めるという行為です。要するに手水舎での行為は略式の禊であるということなのです。
ちなみに神社だけでなくお寺でも手水舎を見かけますが、これは元々神社からお寺に伝わったものです。

 余談ですが、初めて禊を行ったのは日本の国土を産んだ伊邪那岐命(いざなぎのみこと)であるとされています。伊邪那岐命は一緒に国を作った伊邪那美命(いざなみのみこと)を生き返らせるために黄泉の国へと赴きますが、時すでに遅く、伊邪那美命はすでに黄泉の国の住人となってしまっていました。伊邪那美命の姿を見て驚いた伊邪那岐命はやっとの思いで地上へと逃げ帰ります。その後、黄泉の国で穢れた体を清めるために海で禊を行いました。これが禊や手水屋で手と口を清める作法の始まりとされています。

〈手水の作法〉

1.
右手に柄杓を持って水を汲みます。途中で継ぎ足しなどは行わず、この1杯で最後まで行っていきます。

2.
左手に水をかけた後、柄杓を左手へと持ち替え右手にも水をかけます。

3.
柄杓を右手に持ち直し、左手に一口分の水を受けます。

4.
3で左手に受けた水で口をすすぎ、左手に水をかけてこれを清めます。

5.
柄杓の柄が下になるよう縦向きにし、柄杓の中に残った水で柄を洗います。置き場へ柄杓をふせ置いたら終了です。

拝殿編

 手水舎で身を清めたらいよいよ拝殿での参拝です。
拝殿に昇殿し奉呈をする方法が正式な参拝方法ですが、一般的なのは拝殿の前で鈴を鳴らしお賽銭を奉納する方法でしょう。正式な作法と一般的な作法のいずれも流れは変わらず、二拝二拍手一拝の形をとります。より丁寧に行いたい場合には、この前後に会釈をあわせて行います。

 現代において、二拝二拍手一拝の作法は参拝時にほとんどの方が行っている「もはや当たり前の作法」だと思うのですが、実はこれが一般的になったのは戦後からというのをご存知でしょうか。実は近世まで、正式な作法というのが定まっていませんでした。そのため各々様々な作法で参拝が行われていましたが、その中でも2度頭を下げることを2回繰り返す両段再拝は比較的広く知られている作法でしたので、明治時代これをもとに二拝二拍手一拝の作法が考案され、戦後に正式な作法として普及していくことになったのです。

〈二拝二拍手一拝の作法〉

1.
神前に進み出て姿勢を正し、会釈をします。

2.
姿勢を正した状態のまま、腰を90度に折るようなイメージで深くお辞儀をします。これを2回繰り返しましょう。

3.
胸の高さの位置で両手を合わせ、右手の先を少しだけ下(自分の身体の方向)にずらします。

4.
肩幅に両手を開いたら、そのまま手を打ち合わせます。これを2回行います。

5.
2と同様の深いお辞儀をし、一歩下がって会釈程度の浅いお辞儀をして終了です。

 ただし、中には異なる拝礼の作法を設けている神社もあるため参拝時には注意が必要です。たとえば出雲大社や宇佐神宮などでは、二拝四拍手一拝が正式な参拝方法となっています。
ちなみに参拝の際の拍手を柏手とも言いますが、これは拍手の「拍」の字を「柏」と誤記したことに由来するとされています。

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