お坊さんによる「H-1法話グランプリ」とは

「H-1法話グランプリ」という大会があります。「H」は法話のHです。

元々興味があったところ、高野山真言宗の坂本真也さんから「一緒にH-1観ませんか?」と誘われて、「では一緒に見て感想を言い合おう」という話になりました。

「H-1グランプリ」は、「M-1」のように採点し、点数を競うものではなく、「法話の優劣や、宗派による教義の違いによる評価ではなく、『このお坊さんにもう一度会いたい』と思うかどうかがポイントだとのこと。

お坊さんによる「H-1法話グランプリ」参加者

エントリーは8組。
「組」というのは、コンビでの参加が1枠あるからです。

合計で9名の法話が、始まりました。

一人目は、日蓮宗の小林正尚さん。よく通る声で、冗談から入り、とても聞きやすい話でした。
「お寺で見つかる元気の源」というテーマで、お寺の敷居の高さをなくしていきたい気持ちが表現されていました。

二人目は珍しい「融通念仏宗」という宗派の関本和弘さん。関東ではあまり馴染みのない「月参り」の話から、ご先祖さまの大事さについて語られました。
話に構成力があり、聴かせる法話だったと思います。

三人目、私と同じ浄土宗ですが、浄土でも「西山深草派」という、これまたレアな宗派の、畔柳優世さんの法話。
講談のような語り口調で、「地獄」を絵ときで解説し、最終的には、この世を「生き地獄」だと思ってしまうような方に、阿弥陀さまの信仰について説明されました。

四人目は、高野山真言宗の田中宣照さん。コロナ禍での葬儀の切なさの話から、亡くなった人とも心は共にある「同行二人」に流れ、先祖供養による心の支えについて、丁寧に語られました。

五人目は浄土真宗本願寺派の舟川智也さん。唯一、髪の毛の長いお坊さんでした。
「ままならない人生の中で」というテーマで、葬儀における喪主の悲しみによりそうことの大事さについて語られました。

六人目は臨済宗妙心寺派の野田晋明さん。私の友人です。「泥かぶら」という絵本から、「無位の真人」という、「位に惑わされず、人の中にある真の自分に気づく」大事さについて話してくださいました。

七人目は華厳宗の中田定慧さん。落ち着いたトーンで、介護を例に、分け隔てなく見る仏さまの心について話されました。
祈りはすべてお薬師さんに通じ、それは安らぎの心に繋がるという、普段あまり触れることのない華厳宗の考え方に感心しました。

最後の八人目、というか八組目は、天台宗の破石晋照さんと南洞法玲さんの男女コンビ。
漫才スタイルの掛け合いで、自分と違う考え方の人への対し方について、笑いを交えて伝えられました。慈悲の心をもって接することで、お互いを理解することができるのです。

これで全8組の法話が終わりました。いよいよ審査です。

お坊さんによる「H-1法話グランプリ」審査結果

審査員の採点とは別に、会場で聴いている観客にも、3票の持ち点があるとの事で、私と坂本さんも採点してみました。

私は、田中さん、舟川さん、若干の贔屓で野田さんの3名に1票ずつ。
坂本さんは関本さん、田中さん、野田さんに1票ずつ。

審査の結果が出ました。グランプリは、融通念仏宗の関本和弘さん。

そして審査員特別賞に、高野山真言宗の田中宣照さんでした。

坂本さんは二人に票を入れていましたが、私はグランプリの関本さんの法話に票を入れていませんでした。
話の構成がうまく、有難い話であるがゆえに、若干の説教くささを感じてしまったのです。

しかし審査員の方々や、観客の皆さんにとって、やはり有難い話は有難いのです。

私は、自分も法話する身として、話にフィルターをかけていたことに気がつきました。

若い坂本さんの方が、観客の気持ちに近かったのです。

審査員長の釈徹宗さんが「大会というのは建前で、法話の素晴らしさを知って欲しかった」と仰られました。

今後の大会の発展が、楽しみです。

また、今回の「H1法話グランプリ2021」の模様を収めたDVDを下記サイトよりご購入いただけます。
※DVDのご購入のご予約や、詳しい情報については、毎日新聞社が運営する「つなぐ寺」のホームページを御覧下さい。
https://qr.paps.jp/3holG

H1法話グランプリ 公式サイト
https://www.houwagrandprix.com/

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