この世の中は、すべて縁で繋がっている、というのが仏教の教えです。

それぞれの人が、それぞれの役割を果たしながら繋がっていくことで、世界は成り立っています。それはドラクエでも同じです。

「天空編」のドラクエ4は、横の繋がりの話です。ライアンは勇者を探し、アリーナは腕試しに、トルネコは商い、マーニャとミネアはかたき討ちのために旅に出かけますが、最終的には「導かれし者たち」として、デスピサロを倒すために集結します。

ドラクエ6も、自分探しで旅をしていた仲間たちが、いつしか志を同じくし、集まっていきます。

対してドラクエ5は、父・自分・息子という、3世代における「縦の繋がり」の話です。

浄土宗では「共生(ともいき)」という言葉を大事にしています。

まわりにいる人々と、お互いに関わり合い、共に支えながら生きていくこと。そして、それに加え、「過去から未来へ繋がっている『いのち』との共生」という意味もあります。

私たちの「いのち」は、はるか昔の祖先からずっと伝わってきたもので、それは、子供や孫、さらにその先の未来へと繋がっていきます。

直接子供を持たない人でも、同じことです。「共生(ともいき)」とは、今を一生懸命に生きて、次代へ思いを託すことだからです。

過去から未来へと繋がる、縦の繋がりも「共生(ともいき)」なのです。

ドラクエ5のパパスは、亡くなってしまう時に、主人公に「実はまだ生きている母」と「伝説の勇者」を探して欲しい、と託します。

そして、その時、一緒に思いを受け取ったキラーパンサーは、主人公と離れ離れの間も、「パパスの剣」と共に、託された思いを守っていました。

さらに時は経ち、主人公のピンチを救いに来た息子と娘は、既に、伝説の勇者しか装備できない天空の剣を身に着けていました。サンチョという召し使いを通じ、主人公と同じ志を持って、離れていても「共に生きて」いたからこそ、パパスから繋がる意志が伝わっていったのです。

天空城の成り立ちが示されたドラクエ6から、天空人と地上人の禁断の恋の結果生まれた、ドラクエ4の主人公へと意志が繋がり、その勇者の血筋が天空の花嫁に繋がり、さらにそれがエルヘブンの血と交わって、再び伝説の勇者が生まれるという、壮大な「いのち」の繋がりの物語が、「天空編」なのです。

縁と縁との繋がりが広がっていくのが「共生(ともいき)」です。だから、普段からご先祖さまへの感謝を忘れず、自分が今生きて、共に生かされながら、未来へと思いを託していくことが大切です。

パパスとマーサが主人公を見守っていた、あの美しい、ドラクエ5のエンディングのように。

写真協力
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著者紹介

鶯 蒼治郎
謎の浄土宗僧侶。
その正体は闇に包まれているが、以前は目黒で活動していたS山T郎ではないかとも言われている。
《著書》
三笠書房・知的生きかた文庫より『流されない練習』発売中
《関連情報》
根岸・西念寺にて「ドラクエ法話」不定期開催
西念寺ホームページ:http://sainenji.tokyo/