仏事は「おごそか」すぎなくてもよい

「49日忌の法要を自宅で勤めて欲しい、という依頼を受けて伺ったのですが、自宅は自宅でも、お店だったんです。居酒屋さんですね」
「カウンターしかない小さなお店で、ご遺骨を厨房の方にお祀りして、ちゃんと遺影も飾ってありました。狭かったですが、カウンターの中で読経しました」
そう語ったのは、浄土真宗僧侶のSさん。「思い出のお葬儀」を聞いたところ、「葬儀ではないんですが、こんなことがありました」と教えてくださいました。
「近いご親族だけが3~4名、カウンターの座席で座っていて、他の親族は、焼香の順番待ちでお店の外に並んでいました。すれ違うことができないくらい狭いお店だったので、ひとりずつ入って、お焼香したらすぐお店を出て、次の人と入れ替わっていました」
「最初は面食らいましたが、読経が進むにつれ、ああ、これはこれで素晴らしい法要だな、と感じるようになりました」
「故人が大切にしていたお店に、親族だけじゃなく、常連客や近隣の人も集まって、終わったあとはその会場でお斎をとることができるんですから。たまたま時間がなかったので、私は読経のあと帰りましたが、可能ならお斎の席をご一緒したかったです」

葬儀や法事をはじめとする「仏事」は、「おごそかに行わなければならない」と思われがちですが、中には「賑やかに行って欲しい」と思う方もいらっしゃるでしょう。「どちらが正しい」という訳ではないですが、故人の希望と家族の空気感が合っていれば、決して賑やかな仏事も悪いことではないのです。

「私が式場を出たあと、中から『乾杯!』と聞こえた気がしましたが、気のせいだと思います。『献杯』の聞き間違いでしょう」
Sさんは、こう締めくくりました。

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