震災から12年が過ぎた今、
紛争のこと、環境のことで揺れ動くエネルギーの問題。
改めて「原発」について考えるとき。

忘れてはならない被災者の声。

原発事故によって避難生活を強いられたご自身の体験を記録に残すべく、
その後の生涯を通じて発信し続けた小島力氏。

そのとき、なにがあったのか…、なにを思ったのか…。

「原発」について考えるとき、小島氏の声を振り返るとき。

書籍紹介

著者の小島力氏は、東京電力福島第一原発事故で全村避難となり、福島県葛尾村を追われた。
避難生活を強いられながら詩を作り、2013年『詩集 わが涙滂々―原発にふるさとを追われて』(西田書店)を出版。
本著について、新聞の取材に対し著者は、
「社会には忘れさせる風潮がある。自分の中でも風化が進む。多くの被災者が疑問を感じない状態に置かれる。書くことで永久に記録を残す」と語る。

本著を目にした翻訳家の野田説子氏は、
「原発の理不尽さを訴え続ける生き方にも共感した。英訳することが自分の使命だと思った」と、新聞取材にて。
2017年に英語版の『MY TEARS FLOW ENDLESSLY』(西田書店)が出版された。

著者の小島氏はその後も避難生活の日々を綴り、
『故郷は帰るところにあらざりき―原発避難10年の闘い』(西田書店)を出版するべく校正を終えたあと、脳内出血に倒れ、2022年2月24日、87歳で亡くなられた。自身の誕生日だった。

本書より抜粋

【日本語版】

「草茫々」

草茫々
田畑茫々
村一つ荒れ果てて茫々

二年前
玉蜀黍畑を風が渡り
大根の葉先に朝露が鈴生りの
その畑に
ささやかな豊かさに満ちた
その山畑に

草茫々
野道茫々
蔦かずら絡み合って茫々

幾星霜
牛を牽き 耕運機往き来し
何千回何万回の足跡を印した
その道に
暮らしの汗したたり 地にしみた
その畦道に

草茫々
我が家茫々
軒先を埋め尽くして茫々

かつての昔
子たち孫たちの歓声はね返り
バーベキューの焚き火燃え盛った
その庭に
生きて暮らした思い出消えやらぬ
その庭先に

草茫々
ふるさと亡々
わが涙滂々

草茫々
何もかも亡々
悔し涙滂々

【英語版】

「Rampant Weeds」

Rampant weeds
In fields and paddies.
A whole village in ruins with rampant weeds.

Two years ago,
Wind blew through the corn fields.
In fields of radishes, leaves were heavy with morning dew,
In those mountain fields,
Where we were content with our small lives,

Rampant weeds!
Rampant on meadow paths,
Rampant where vines twist around.

Year upon year
Cattle and cultivators have passed――
Thousands, tens of thousands of times,
On the roads,
On the footpaths between paddies
Where people wiped away their sweat.

Rampant weeds!
Weeds surrounding our house
Burying the eaves.

In the garden where the voices of
Our children and grandchildren used to resound――
Barbeque on the fire, joyful chatter――
In the garden,
Where we used to have a good time
And memories of the lives we have lived never fade,

Rampant weeds!
My homeland is disappearing――
My tears flow endlessly.

Rampant weeds!
Rampant disappearing!
Rampant bitter tears!

書籍情報

『詩集 わが涙滂々―原発にふるさとを追われて』
【著者名】小島力
【出版社】株式会社 西田書店
【発行日】2013年5月10日
【頁数】132ページ

『MY TEARS FLOW ENDLESSLY』―詩集 わが涙滂々 原発にふるさとを追われて(抄)―
【著者名】小島力
【英訳】野田説子
【出版社】株式会社 西田書店
【発行日】2017年3月6日
【頁数】124ページ

『故郷は帰るところにあらざりき―原発避難10年の闘い』
【著者名】小島力
【出版社】株式会社 西田書店
【発行日】2021年10月15日
【頁数】232ページ

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