昭和10年(1935年)5月の創刊から、およそ90年。
法然上人鑽仰会(ほうねんしょうにんさんこうかい)が発行する月刊誌『浄土』が、本号をもって通巻1000号という偉大な節目を迎えました。

一般書店に並ぶ商業誌ではない会誌が、これほど長く続き、1000号を重ねることができたのは、まさに奇跡的な歩みと言えます。

この大きな節目に寄せられた、法然上人鑽仰会 佐藤孝雄会長の挨拶全文をご紹介します。
戦中・戦後の混乱期における先人たちの気概、そしてこれからの『浄土』の新たな決意が記されています。



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通巻1000号に寄せて|月刊『浄土』の歩みとこれから

法然上人鑽仰会会長 佐藤孝雄

 法然上人鑽仰会の会誌、月刊『浄土』は、お陰様にて本号で通巻一○○○号の節目を迎えることができました。一般書店に並ぶ商業誌でもない会誌がこれほどの号数を重ねてこられましたのは、ひとえに先達たちの情熱と会員各位のお力添えの賜物であり、感謝に堪えません。

 ご承知の通り、浄土宗有志により発足した本会が、その活動を実りあるものとすべく月刊『浄土』の刊行を開始しましたのは、発会の翌月に当たる昭和十(一九三五)年五月に遡ります。以来、年間十二号の発刊が滞りましたのは、昭和二十(一九四五)年とその翌年のみ。それぞれ刊行数が三号、七号に留まったとはいえ、アジア太平洋戦争の戦中・戦後の混乱期にも刊行が続けられたことに驚きを禁じ得ません。

 戦後初めて刊行された昭和二十一(一九四六)年三月号を開くと、「信仰相談」の頁に、本会設立者の一人である中村辨康上人が「国が破れて家も焼かれました。食糧にも困って居る現実を如何に生き抜いたら宜いでしょうか」という読者の切実な問いに対する返答を記しておられました。日本が今こそ「兵戈無用」の理想国になるべきであると説かれた後、辨康上人は次のように答えておられます。

「一人の力では成し遂げ得られないかも知れませんが、同信相携へて信力を併せ、その協力せる信仰生活によって隋想に清純な渦巻きを巻き起こせば、そこには「崇徳興仁務修禮譲」の美風が起り、「天下和順」し、「風雨時を以てする」三寒四温五風十雨の世の中ともなり得るでありましょう。かの藤原末期において天下乱れ災難起り兵火に焼け、民心不安絶望の絶頂に際して、法然上人が念仏の大衆的信仰を衝動せらるゝや、天下糾然としてこれになびき、やがて人身の不安動揺が静まったように、真実の信仰によってのみ、こうした大国難も乗り切れるのであろうと思います。 

 しかし信仰さえあれば手を拱いていてよいと云うのではありません。信仰は観念ではありません。生活であります。行動であります。念仏は口業に限られて解釈されておりますが、実際生活には身口意の三業に渡るべきものであります。それですから、ただすがってさえいればよいとか、或は念仏を唱えておりさえすればよいとか云うものでなく、力強い如来の大増上縁力によって、生活に、業務に、行動に、経済に、すべてを信仰的清純さに引き直して行くべきであると信じます。

 どうぞお互いに協力して理想国としての日本を愛し合い、興隆するよう努力し合って行きましょう」。 (※一部、現代語変換など加筆訂正す。編集部)

 法然上人の教えを踏まえた、なんと力強い励ましの言葉でありましょうか。『浄土』が長く読み継がれてきたのは、生き方に迷われる方々の灯ともなってきたからでしょう。

 残念ながら、編集・印刷費の高騰など諸般の事情から『浄土』はこの後、刊行頻度を減らし、季刊に舵を切らざる得ない状況です。しかしながら、時は流れ、世情は変わろうとも、生き方に悩み、苦しむ方々が絶えることはありません。その方々にも寄り添い、暗海を照らす灯台の役目も果たすべく『浄土』の刊行を続ける必要があると愚考します。ウェブ上でのデジタル発信なども駆使しつつ、時代と向き合い、「時機相応」の発信を続けて参りたいと存じますので、会員各位におかれましては、引き続きご支援・ご鞭撻くださいますようお願い申し上げます。



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雑誌『浄土』・法然上人鑽仰会について

『浄土』は、昭和10年の創刊当初、鉄道弘済会(現キオスク)で『文藝春秋』と並んで販売されるほど、広く一般の方々に親しまれてきた歴史があります。
佐藤春夫など当時の人気作家が寄稿した別冊『念佛読本』が人気を博したことからも、僧侶だけでなく、多くの人々にとって身近な雑誌であったことがうかがえます。

1001号からは、時代に合わせて季刊誌(年4回発行)として新たなスタートを切ります。
「生き方に迷う方々の灯となる」という創刊以来の思いを受け継ぎながら、これからも心の支えとなる言葉をお届けしていきます。

【1000号記念イベント】宗派を超えて語り合う「禅」と「念仏」

この記念すべき節目に、臨済宗円覚寺派管長・横田南嶺老師と、浄土宗大本山増上寺法主・小澤憲珠台下による特別鼎談が開催されます。 テーマは「禅と念仏」。
宗派の垣根を超え、これからの仏教について語り合う貴重な機会です。

▼イベントの詳細はこちらの記事をご覧ください
https://coco-yori.com/News/view/cocoyori/13651

【ご入会・購読について】

法然上人鑽仰会に入会すると、会誌『浄土』がお手元に届きます。

  • 年会費: 4,000円(送料込)
  • 単冊購入: 1部 300円(送料別)

1000号という歴史の重みと、新しい時代の息吹を感じられる本誌を、この機会にぜひ手に取ってみてください。

▼詳細・お申し込みはこちら(法然上人鑽仰会 公式サイト)
https://jodo-sangokai.org/

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