「負けたら終わり」の完璧超人に足りないもの

現在アニメ放送中の「完璧超人始祖編」。
悪魔超人たちが、序盤戦を盛り上げています。
ステカセキングがマッスル・インフェルノを決めたときは、テレビの前で叫びました。

以前のシリーズでは敵だった悪魔たちが、「味方になった訳ではない」とはいえ、正義超人と一緒に共通の敵に向かっていく今回のシリーズ。
それぞれの主義や考え方は違えども、かつて拳を交えた者同士、わかりあえることはある。
アトランティスの放った最後の技に、そのことが表れていました。
前回記した通り、「悪魔にも友情はある」のです。
https://coco-yori.com/News/view/cocoyori/12171 「友情と布施」キン肉マン法話#2」

一方、自分たち以外のことを「下等超人」と見下している完璧超人。彼らには、試合に敗れたら、その時点で死ななければならないという掟があります。
「完璧な強さを示すことのできない完璧超人には用はない」からです。

一見、完璧を求める超人たちらしい主義に見えますが、この論理には、重大な欠点があります。
これでは、負けた時点から成長することがないのです。

「たった一回の敗北がなんだっていうんだ…」

正義超人ロビンマスクのセリフです(ジャンプコミックス42巻P57)。このあと「負けが超人を成長させてくれることもある!」と続きます。

ロビンはかつて、超人の世界チャンピオンでした。プライドも高く、誰にも頼らず、未熟な他人の意見などに耳を貸す必要などないと思いながら生きてきました。

ロビンを変えたのは、キン肉マンでした。
超人オリンピックで、それまでまったく相手にしていなかったキン肉マンに敗れ、さらに再戦したグランドキャニオンで、負けに等しい無効試合。そして、自分のすべてを叩きこんで送り出した「ファイティングコンピューター」ことウォーズマンも、返り討ちにあってしまったのです。

ロビンは、キン肉マンに3度敗れたことで、初めて「自分以外の他者に敬意を払い、認め合うことのすがすがしさ」を知りました(ジャンプコミックス44巻)。それは、ロビンにとってとても大きな成長だったのです。

キン肉マン自身も、超人オリンピック優勝直後、ハワイ遠征でカメハメにたった7秒で敗れたことで、そのカメハメから48の殺人技を習い、成長しました。敗北は、超人を成長させるのです。

お釈迦さまは、悟りを得るために苦しい修行をしていましたが、断食中に施されたお粥を口にすることで、苦行をやめてしまいました。しかし、悟りへの道を諦めた訳ではなかったので、その後、菩提樹の下で瞑想し、悟りへとたどり着きました。
このまま苦しい思いをしながら死んでしまっては、目的とする「生きていると生じてくる苦しみを消すこと」には到達しないと思い、軌道修正したのです。

かつてのお釈迦さまも、「完璧」ではありませんでした。
「完璧」を目指して、挫折にめげず、少しずつ進んでいくことが、成長への道なのです。

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