“家”の墓、“パーソナル”な墓。それぞれが放つ彩り

小学生の頃、冬休みの宿題は書初めでした。墨をすり、手本を見ながら筆を立てる。
夏休みは絵日記。家族で行った小旅行の思い出をクレヨンで描く。

品川区にある本立寺の境内を歩きながら、それを思い出しました。


国道1号線沿いの喧騒とは無縁な静寂が広がる境内。
そこに伝統的な墓所と、先進の樹木葬が併存しています。

伝統的な墓所のエリアにある墓石の多くは、「先祖代々之墓」「○○家」と刻まれています。
先祖を敬う、「家」を継承する、自分がどこから来たのかを認識するにふさわしい静謐なモノトーンの空間です。

一方の樹木葬のエリア・島津山庭苑は、折々の花や緑に包まれた安らぎの場です。
墓石には、夫婦の名前に短い言葉が添えられたり、故人が愛した花やペットのイラストなどがカラフルに描かれています。さながらキャンバスのよう。

アンカレッジの樹木葬・島津山庭苑が先進である理由

日本人のライフスタイルの変化により、「家族に負担を残さず」「自然の中で眠れる」樹木葬が人気を集めています。

数ある樹木葬の中で、島津山庭苑が先進といわれる理由のひとつは、墓石に刻まれた文字やデザインの美しさです。墓石1つ1つから、利用する人の“自分らしい表現”“ライフヒストリー”が伝わってきます。

世界にひとつだけの墓石。
庭苑の石畳を歩くとその作品群に圧倒されます。


「“家”から“パーソナル”へ。お墓のあり方が変わりつつある中で、ご契約者様はお墓の表現に自由度を求められています」
そう話すのは、島津山庭苑の樹木葬プランナー (株)アンカレッジの一宮さんです。

「自分のお墓を自由に表現してみたい」という声が増えるのは自然な流れでしょう。

ただ、オートクチュールな墓石を実現するのは、至難の業なのです。


「墓石はサイズが限られているため、文字とイラストのバランス、ご契約者様のニュアンスを共有することが難しく、細部まで調整が必要です。手描きの文字や色付きのイラストを刻みたいとのご希望もあります」(一宮さん)

利用する人の想いに応えるお墓を作るには、墓石を自在に操ることのできるプロフェッショナルの存在が欠かせません。

墓石の彫刻や加工の多くが海外へ発注されている現状で、ニュアンスや細部へのこだわりを表現できるプロは数限られます。

東京23区内で唯一。字刻(じほり)のプロが貫くこだわり

そんな貴重なプロフェッショナルのひとりが、(株)石政工業所の代表取締役・高橋政司さんです。
石政工業所は伝統的な墓石から樹木葬用の墓石まであらゆる墓のデザインを手掛けて100年の歴史を誇る、東京23区内で唯一の字刻(じほり)業者です。

高橋さん

墓石のデザインが大きく変わったのは、洋型(横型)が出てきた30~40年ほど前です。
“心”“ありがとう”という言葉が刻まれ始めて、
『うちは“和”にしよう』
『桜の花びらをあしらえないか』
という要望が増えました

石政工業所の字刻へのこだわりは凄まじく、一例をあげると、持ち込まれた手描きの筆文字を0.1ミリ単位で調整し、筆のかすれや揺らぎを消さないよう、石へ置き換えても「その人らしさ」が残る形に変換するとのこと。
複製ではなく、もはや翻訳の域です。

そんな字刻のプロと、樹木葬のプロ・アンカレッジがタッグを組んで作り上げたのが、島津山庭苑のお墓です。


島津山庭苑の墓石ができるまでを見てみましょう

契約者様と樹木葬プランナーで、彫刻デザインの打ち合わせ

一宮さん

当社の樹木葬には、お名前や生没年月日はもちろん、お好きなイラストを彫刻することができます。
故人様がお好きだったお花であったり、生前の趣味であるゴルフや野球に関するモチーフだったり。
最近はペットを家族のように思われている方が多いため、ワンちゃんやネコちゃんのイラストもあります。

1,200点ほど彫刻デザイン専用のイラスト素材集を用意しており、その中からお選びいただけます。
素材集を使うことで、『この1番と4番のイラストに、この飾り罫線を入れてください』と選ぶだけで、彫刻デザインのベースが完成します。

オリジナルな彫刻デザインにしたい、というご要望は確実に増えています。
そのためにも、柔軟なデザインのご提案、ご契約者様との具体的なイメージ共有、石政工業所さんとの密な連携を何よりも大切にしています。

STEP
1

契約者様の要望を字刻のプロに伝えて、彫刻デザインを作成する

高橋さん

デザインラフの作成で難しいのは、文字とイラストのバランスです。
お客様によって
『小さくていい』
『できるだけ大きく』と希望が違う。
数パターン提案して調整します。

樹木葬はエリアによってはお墓が前後に位置するため、遠近感を考慮して奥側の文字を大きくするなど工夫しています。

STEP
2

デザインが確定したら、いよいよ彫刻づくりへ

デザインが決まると、実際の作業に入ります。

高橋さん

お客様からの細かい寸法指示に応えるため、デザインラフと墓石の中心を正確に出し、同じ位置に配置します。

高橋さんの
ご長男
政樹さん

彫刻しない部分を保護するためにゴムシートを貼り付けます。
シートが剥がれないように糊を塗ります。

かつては墓石側に糊を塗っていましたが、塗料との相性で剥がれる問題が起こり、試行錯誤の末、ゴムシート側に糊を塗る方法に変えました。

ここからが字刻の本番。

高橋さんの
ご長男
政樹さん

彫刻はサンドブラストという機械を使います。
細かい砂を圧縮空気で噴射して石を削っていきます。

縦型の墓石の文字は大きく深めに彫りますが、樹木葬の墓石は小さいため浅く細かく彫ります。
2種のサンドブラストと太細の噴射ノズルを使い分けます。

技術的に困難で根気の必要な作業です。

墓石は「深く彫れば立派に見える」と思われがちですが、プロの考えは逆です。
浅く、均一に彫るほうが圧倒的に難しい。
墓石が上を向いている樹木葬は、深い彫りは汚れや樹液が溜まりやすく、美しさが半減してしまうのです。


さて、最後の難関が色入れです。

高橋さんの
ご長男
政樹さん

お客様の要望により多様な色を使います。
用意している色見本帳には、緑が4色、茶色が6色など、同じ系統の色でも複数の選択肢があります。

特に複雑なデザインでは、色移りがないよう色ごとにマスキングテープを貼り直す作業を繰り返すことになります。

STEP
3

時代に合わせて利用される人の想い、表現を形に

樹木葬のプロと字刻のプロのタッグによって、世界にひとつだけのお墓が完成します。

高橋さん

石は永く残るものだから、お客さんの納得できる仕上がりにします。
そのためにわれわれ職人は、工程を見直し、技法を更新し、道具や素材の扱い方を変え続けています。墓は時代に合わせて変わり続けています。

今後デザインの自由度はますます高くなるでしょう。
それに応じて技術を磨き続ける必要があります。

『できません』とは言えない世界ですから。

一宮さん

お墓をどんなデザインにするか。
家族同士でじっくり話し合う姿がよく見られます。

『どんな言葉があの人(故人)らしいか』
『どの花が好きだったか』
という会話が、“追悼の時間”になっているように思います。
完成した樹木葬を見て「これでよかった!」と安心されるのを見ることにやりがいを感じます。

今後はさらに独自性を尊重する方向に進むと思います。
時代に合わせて利用される人の想い、表現を形にしていきます

墨の匂い、クレヨンの発色、緊張しながら描いた線。
子どもの頃の表現は、いつも自分と向き合う時間でした。

島津山庭苑の石畳に並ぶ樹木葬も、どこかそれに似ています。

旅路の終わりに、もう一度自分を表現する。

人生を刻む絵日記のような樹木葬の需要はますます増えそうです。

取材協力
アンカレッジ ホームページ
https://anchorage.co.jp/

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