おじいちゃんが会いに来る。蝶が舞い、鳥が歌う“生きた墓”

転換期を迎えている“樹木葬”に、新たな視点を持ち込んだ造園デザイナーの石原和幸さん。

石原和幸さん

「私の造園デザインの原点は、生まれ育った長崎の原風景にあります」

「棚田が広がる谷あいの村で、6月には星空の下、無数のホタルが谷を舞う。初秋は夕陽を浴びた赤トンボの羽々で一面が輝く。そんな自然豊かな環境でした」

「自給自足の村で、誰かが亡くなると村人たちが庭の草花を持ち寄って棺や墓に飾ります。花や緑があると人は穏やかな気持ちになる。笑顔になれる。私はそう信じています」

そんな原風景を、稀代の造園デザイナーは樹木葬の世界にどう持ち込んだのでしょうか。
石原さんがデザインした樹木葬の石畳を歩くと、明るく清々しい気分になるとともに、どこか懐かしさを感じます。

石原和幸さん

「樹木葬だからと、ただ花や樹を植えればいいというものではありません。ツバキを植えるとメジロが飛んでくる。フジバカマの花が咲くとアサギマダラが蜜を吸いにやってくる。やがて鳥や蝶たちはどこかへ戻っていく。そんな光景を見て『おじいちゃんが会いに来てくれたんじゃないか』と、命のつながりを感じてもらえる空間になる。そうデザインしています」

「春夏秋冬、日本にはそれぞれに咲く花々があります。故人は365日、花や緑に包まれて眠ることが大切です。花や樹の選定、造園には徹底的にこだわっています」

“経年美化”。「40年後に美しいガーデンになる」樹木葬という約束

お話を伺っている中で、連想するのは英国のメモリアルガーデンです。
自然や庭園の景観の中で追悼する公共の空間。その中に故人の記憶が溶け込んでいます。

石原和幸さん

「建物は完成した直後が最も美しい。でも私がデザインした樹木葬は、造った時がスタートです。20年30年と経つうちに木々が育って木陰ができる。花や緑が増えることで生態系が豊かになる。経年劣化ではなく経年美化していきます。40年後を想像すると素晴らしい景観になっていますよ」

英国「チェルシーフラワーショー」通算13個の金賞受賞者である石原さん。
石原さんがデザインする樹木葬には、こうしたメモリアルガーデン的な要素がすでに織り込まれており、さらにその先の未来を見据えています。

石原和幸さん

「地方から都市へ出てきて故郷に帰らない人が増えています。宗教も様々でペットもいる。そんな人たちがガーデンの中に墓を持ち、何世代も眠ることができる。残された者たちはガーデンで故人を想い、散策を楽しむ。新しい日本の文化です。ぜひ広めたいですね」

「それから、いまお寺が墓じまい、檀家離れで大変ご苦労されていると聞きます。従来のお墓は『遺骨を守る場所』という“閉じた”印象があります。もったいない。花咲く境内や樹木葬を“開かれた“お寺に変えるきっかけに利用していただきたいと思っています」

羽田空港第1旅客ターミナル(2012年)
チェルシーフラワーショー2025作品

「遺骨を守る」から「風景を共有する」へ

転換期を迎えている樹木葬は、これからどこへ向かうべきなのでしょうか。

石原和幸さん

「チェコの墓を見学で訪れたとき、ある墓石にくぎ付けになりました。故人の経歴がユーモアたっぷりに刻まれていました。『へー、こんな人だったんだ』と微笑ましくなる温かな場所でした。これからの樹木葬はそんな場所であってほしいです」

区画・スペースを買う樹木葬から、風景、思い出を共有する樹木葬へ。

そして、「遺骨を安置する終着点」から「命の息吹を感じる庭」へ。

石原さんのお話は、樹木葬選びを考えているユーザーだけでなく、今後樹木葬の設置を検討している寺院関係者にも示唆に富むものでした。

石原さんと長女の桜さん 石原さんと長女の桜さん
三原庭園 和庭園 長崎市・三原庭園

【石原和幸氏の世界観に触れる】
石原氏が故郷の長崎で手がける「三原庭園」。石原氏の造園デザインの原点であり、鳥や蝶が舞う圧倒的な「緑の魔法」を体感できる場所です。

▶ 公式サイトはこちら

取材協力
株式会社アンカレッジ
https://anchorage.co.jp/

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